第67回 住宅(不動産)にかかわる民法改正の概要(22)



回も、契約一般に関わる法改正のうち、住宅(不動産)に関わる論点を取り扱います。今回はこれまでに取り上げていなかった論点を見ていきます。



1 賃貸人の債権者による賃料請求(債権者代位権)

賃貸人(債務者)に対して債権を有する債権者がいるケースで、賃貸人(債務者)が債務を履行しないため、債権者が、賃貸人の賃料債権によって自身の債権の満足を図りたい場合を想定します。

このような場合に、債権者が債務者に代わって行使できる権利を債権者代位権といい、改正前にも定めがありました(改正前423条)。今回の改正では、賃料などの金銭の支払を目的とする債権者代位権の行使について、債権者が相手方(賃借人)に対して直接の支払を求めることもできることが明文化されました(423条の3)。

ただし、債権者代位権の行使は、「自己の債権を保全するため必要がある」ことが要件とされているため(423条1項)、債務者に他に資産がないこと(無資力)が必要と考えられており、常に債権者代位権を行使可能というわけではない点に留意が必要です。

改正前は、債権者代位権が行使された場合、債務者(賃貸人)は、自身での取立て等はできなくなるとされていました。しかし、今回の改正により、債務者(賃貸人)による取立て等は妨げられないこととされました(423条の5)。賃借人の立場で、賃貸人の債権者、賃貸人の双方から賃料の請求を受けた場合、どちらかに支払えば良いことになります(423条の3、423条の5)。

このように、債務者自身の権利行使が妨げられない点において、改正前に比べ、債権者代位権による債権回収の実効性は減少したと考えられます

(債権者への支払又は引渡し)
第423条の3

債権者は、被代位権利を行使する場合において、被代位権利が金銭の支払又は動産の引渡しを目的とするものであるときは、相手方に対し、その支払又は引渡しを自己に対してすることを求めることができる。この場合において、相手方が債権者に対してその支払又は引渡しをしたときは、被代位権利は、これによって消滅する。

(債務者の取立てその他の処分の権限等)
第423条の5

債権者が被代位権利を行使した場合であっても、債務者は、被代位権利について、自ら取立てその他の処分をすることを妨げられない。この場合においては、相手方も、被代位権利について、債務者に対して履行をすることを妨げられない。





2 未発生の賃料債権の譲渡(将来債権の譲渡)

賃料のような金銭債権についても、財産の一種として、売買等による譲渡は可能とされています。

ただし、賃料は毎月発生するのが通常であるところ、支払期限が到来して既に発生したものだけでなく、現時点では発生しておらず将来発生する将来債権も想定されます。

改正前においても、将来債権は譲渡可能と考えられていましたが、今回の改正で、将来債権が譲渡可能であることが明文化されました(466条の6)。

賃料の場合、賃借人が転居するなどして契約が終了する可能性があるため、将来の債権の発生は確実ではありません。その他の将来債権においても、このような不確実性があるのが通常です。しかし、法は、こうした不確実性があっても、債権を譲渡すること自体は問題ないとの立場をとっており、不確実性のリスクは、債権を譲り受ける者が適正に評価して売買代金に織り込む等の対応を行うことが求められます。

賃借人の立場では、賃料債権が譲渡される可能性があることを念頭に、債権者に対して支払いを行い、二重払いのリスクを避けることが重要となります。

(将来債権の譲渡性)
第466条の6

1 債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない。

2 債権が譲渡された場合において、その意思表示の時に債権が現に発生していないときは、譲受人は、発生した債権を当然に取得する。

3 (省略)





ポイント

賃料などの金銭の支払を目的とする債権者代位権の行使について、債権者が相手方(賃借人)に対して直接の支払も求めることができることが明文化された(423条の3)。

債権者が債権者代位権の行使により、相手方(賃借人)に対して支払を請求した場合でも、債務者(賃貸人)による取立て等は妨げられないこととされた(423条の5)。

将来発生する賃料等の将来債権について、譲渡可能であるとことが明文化された(466条の6)。



22回にわたって連載してきた住宅(不動産)にかかわる民法改正の概要は今回で最終回となります。ありがとうございました。


ABOUTこの記事をかいた人

一橋大学経済学部卒。株式会社村田製作所企画部等で実務経験を積み、一橋大学法科大学院、東京丸の内法律事務所を経て、2015年にアクセス総合法律事務所を開所。 第二東京弁護士会所属。東京三弁護士会多摩支部子どもの権利に関する委員会副委員長、同高齢者・障害者の権利に関する委員会副委員長ほか