第35回 老朽化した空き家のトラブル事例


国や地方自治体では、空き家をそのままにはせず、何らかの処置をしていくために、「空家等対策の推進に関する特別措置法」等に基づく対策を推進しています。空き家対策特別措置法は、空き家の放置によって発生するさまざまなトラブルを解消し、空き家の活用や処分を後押しするための法律です。同法では「特定空家等」として認定された空き家の所有者に対し、行政が修繕または撤去の指導、勧告、命令を行うことができる旨を定めています。

行政が様々な対策を打ち出す一方で、空き家の中には長期にわたり「放置」をされていたものも少なくなく、これが処置をしていく上での弊害となり、さらにはトラブルを引き起こすケースもあるのです。ここでは、空き家に関するトラブルのパターンを紹介します。



空き家が引き起こすトラブルのパターン

適切に管理していない空き家(建物や土地)が引き起こす問題には、①放火、②ゴミの不法投棄、③不審者の侵入・住みつき、④地震や突風による家の倒壊、⑤景観の悪化、といったものがあります。放火は、空き家の周辺住民の方が不安視する問題の1つであり、敷地内にゴミが散乱したり雑草が繁殖していたりすると、あっという間に火が燃え広がり、大火災へと発展する恐れもあります。冬場は、特に注意が必要です。

また、人の出入りがないと判断された空き家に、ゴミが不法投棄されているケースがあります。空き缶や古雑誌をはじめとした生活ゴミだけではなく、家電製品や家具、自転車、布団などを投げ捨てていくケースもあります。さらに、空き家の所有者が不在と判断されると、不法侵入者による侵入や盗難の被害を受けやすくなってしまいます。



災害時における不安要素にもなってしまう

近年では、最も危惧されているのが家の倒壊でしょう。空き家は、適切な管理がなされないため、一般の住宅よりも早く老朽化が進んでいきます。例えば、大きな地震や突風により、外壁の一部が剥がれてしまったり、アンテナ類が倒れて落下したりする危険性も高まってくるのです。また、景観の悪化という点については、「街並みの風景に与える悪影響」ということのみならず、不法投棄されたゴミによる悪臭や、地域全体のイメージの悪化という問題を挙げることもできます。


ABOUTこの記事をかいた人

慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、大手資格取得の専門予備校LEC<東京リーガルマインド>で講師として働きつつ、中央大学法科大学院を卒業。現在、(株)M&Kイノベイティブ・エデュケーション代表取締役のほか、(一社)日本不動産仲裁機構の専務理事兼ADRセンター長を務める。