第34回 落雪によるトラブル事例


先日、関東地方でも雪が降りました。どうやら2022年の首都圏は雪が多いようです。雪は住宅に関するトラブルも引き起こします。大量に雪が積もった後に落雪してしまうと、思わぬ事故を引き起こしてしまう危険性があります。雪が屋根から落下してくると大怪我をしてしまったり、さらには落ちてきた雪に埋もれたことで死亡事故につながってしまったりするケースもあります。



必ずしも賠償されるとは限らない落雪

落雪による被害に対しては、必ずしも賠償責任が発生するとは限りません。落雪は台風や地震などと同じように、「自然災害」と見なされるケースが多いためです。ただし、毎年大量の雪が降る豪雪地帯において、落雪による被害を防ぐための対策をとる義務を怠ったとして、損害賠償責任が発生した事例もあります。



自動車のボンネットがへこんでしまった

A氏は、東海地方にマイホームを構えていましたが、、隣家の屋根に積もった雪が凍って固まりとなって落ちてきて、駐車場に置いてあった自動車のボンネットが凹んでしまいました。A氏は隣家のB氏に損害賠償請求をしようと調べていたところ、豪雪地帯でないA氏の住む地域では、雪による被害は自然災害として捉えられるため、損害賠償請求が認められないことが多い、ということを知りました。

しかし、どうしても納得のできないA氏。しっかりとB氏と話をして、自分自身の考えるところを伝えたいと思い、ADRに取り組むことにしました。そして、隣人からのADRの申し出をむげにはできないとして、B氏もADRを受けることにしました。



話し合いのメインテーマは今後の対策

ADRの話し合いの場では、起きてしまったことは仕方がないということと、今後同じことが起きないためにはどうすれば良いのか、という話し合いがなされました。対策としては互いの家の屋根に雪止め金具を付けるということと、落雪被害箇所の修理費用を出すために火災保険をしっかりと調べて活用しよう、ということになりました。また、ADRの結果としては、落雪による被害については被害額の半額をB氏が出すということで和解となりました。


ABOUTこの記事をかいた人

慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、大手資格取得の専門予備校LEC<東京リーガルマインド>で講師として働きつつ、中央大学法科大学院を卒業。現在、(株)M&Kイノベイティブ・エデュケーション代表取締役のほか、(一社)日本不動産仲裁機構の専務理事兼ADRセンター長を務める。