今回も、契約一般に関わる法改正のうち、住宅(不動産)に関わる論点を取り扱います。今回は法定利率に関わる改正内容を見ていきます。 法定利率とは、法律で定められた利率のことをいいます。利率(利息)は、金銭の貸借において適用されますが、当事者間に別の定めがない場合には、金銭債務の支払期限から遅れた場合に発生する遅延損害金についても法定利率が適用されます(民法419条1項)。 なお、当事者間で、別に利率や損害金の率について定めていた場合、原則として当事者間の定め(約定利率)が適用されます(同項ただし書)。 (法定利率) 1 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。 2 法定利率は、年3パーセントとする。 3 前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、3年を一期とし、一期ごとに、次項の規定により変動するものとする。 4 各期における法定利率は、この項の規定により法定利率に変動があった期のうち直近のもの(以下この項において「直近変動期」という。)における基準割合と当期における基準割合との差に相当する割合(その割合に1パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)を直近変動期における法定利率に加算し、又は減算した割合とする。 5 (省略) (参考:改正前404条) 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年5分とする。 (金銭債務の特則) 1 金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。 2 (以下省略) 改正前民法では、法定利率は年5分(%)とされていましたが(改正前404条)、低金利の時代が長く続く中、実態と乖離しているとの批判がなされてきました。こうした批判を踏まえ、今回の改正では、法定利率が年5%から年3%へと変更されました(404条2項)。 それとともに、これまで固定されていた法定利率に関し、3年毎に見直しを行う規定が新設されました(同条3項)。見直しにおいては、直近5年間の短期貸付利率を指標とし、法定利率と年1%以上の差異が生じた場合に変更が行われることとされました(同条4項、5項)。 また、商行為に適用される商事法定利率について、これまで、民法より高い年6分(%)と定められていましたが(改正前商法514条)、民法改正に伴い、同条項が削除され、商行為についても、法定利率は年3%に統一されました。 不動産売買においては売買代金の支払と所有権移転が同時履行とされる場面が多いため、遅延損害金が生じ、法定利率が適用される場面は少ないと考えられます(住宅ローンの審査が通らない等により代金の支払が不能となる場合、当然終了を定める条項や解除により処理される場合が多いと考えられます。)。 他方、賃貸借のケースでは、契約で定められた毎月の賃料の支払が滞った場合、遅延損害金が生じますので、契約に特段の定めがない場合には、遅延損害金には年3%の法定利率が適用されます。なお、見直し規定により法定利率の変更があった場合でも、最初に損害金が生じた時点の利率が適用される点に留意が必要です。 このように、賃貸借契約で遅延損害金の定めがない場合、遅延が生じた時点での法定利率によることになるところ、今回の改正では、法定利率の引き下げとともに3年毎の見直しも定められたことから、特に賃貸人の立場では、これまで以上に、契約において遅延損害金を定める重要性が増したと考えられます。 なお、当事者間で遅延損害金の定めを合意した場合、原則としてその率が適用されることは上で述べたとおりですが、当該契約が消費者契約法の適用を受ける消費者契約(消費者と事業者と間で締結される契約(消費者契約法2条3項))である場合、年14.6%を超える遅延損害金については、当該超過部分が無効となることに留意が必要です(消費者契約法9条2号)。 また、個人間の契約等で消費者契約法の適用がない場合には、「●%まで」といった制限はありませんが、あまりに高い損害金が定められた場合、公序良俗違反(民法90条)として、社会通念上許容される率を超える部分は無効となると考えられます。l 法定利率について、従来の年5%から、年3%へと変更された。 法定利率は、3年毎に見直しが行われることとされた。 賃貸借契約において遅延損害金の定めがある場合には、原則として契約の規定が適用されるため、契約における定めの有無や内容に留意する必要がある。 次回は、住宅にかかわる改正事項のうち、これまでに取り上げていない内容を取り扱う予定です。
1 法定利率とは
第404条
第419条
2 法定利率の改正
3 住宅に関わる実務への影響
ポイント