第61回 住宅(不動産)にかかわる民法改正の概要(16)



回から、契約一般に関わる法改正のうち、住宅(不動産)に関わる点を取り扱い、前回は契約の成立に関する改正を解説しました。今回は、契約の無効、解除の効果に関わる改正内容を見ていきます。



1 原状回復義務

改正前民法において、有効に成立した契約が後に解除された場合については、当事者が原状回復義務を負うことについての規定はありましたが(545条1項)、無効な契約に基づいて(ただし、当事者は契約が有効と考えて)債務の履行が行われた場合の取り扱いについては、明文規定がありませんでした。

改正法では、121条の2が新設され、無効な契約に基づく債務の履行がされた場合、給付を受けた当事者が原状回復義務を負うことが明記されました。例えば、無効な不動産の売買契約により誤って代金の支払が行われた場合、同条1項に基づいて売主には代金の返還義務が生じることになります。

なお、契約が取り消された場合についても、初めから無効であったものとみなすと定める121条により、同様に原状回復義務が生じることとなります。

もっとも、改正前も、契約が無効な場合、契約で定められた給付(金銭の支払等)を受ける理由がないことは当然とされ、無効な契約に基づく履行がされた場合には、主に不当利得返還請求(703条)によって事後処理がされていました。

今回の改正は、従前、当然の法理と考えられていた内容の明文化と理解されており、内容面での変更を加えるものではないと考えられていますので、改正による不動産実務への特段の影響は想定されません。

(原状回復の義務)
第121条の2

1 無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負う。

2 前項の規定にかかわらず、無効な無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、給付を受けた当時その行為が無効であること(給付を受けた後に前条の規定により初めから無効であったものとみなされた行為にあっては、給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであること)を知らなかったときは、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。

3 第1項の規定にかかわらず、行為の時に意思能力を有しなかった者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。行為の時に制限行為能力者であった者についても、同様とする。

(取消しの効果)
第121条 取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。






2 契約の成立および方式

有効に成立した契約が後に解除された場合の効果については、改正前から545条が原状回復義務を定めていました。

この原状回復義務について、金銭を返還する場合には、利息を付すべき定めがありましたが(545条2項)、金銭以外の物の返還の場合、物から派生する利益の取り扱いについての定めはありませんでした。

今回の改正で、545条3項が新設され(1項、2項、4項(改正前の3項)は変更なし)、契約解除に伴う金銭以外の物の返還に際し、受領時以後に生じた果実も返還対象となることが明記されました。

不動産実務においては、例えば、売買契約の解除により対象物件を返還する場合、物件引き渡し以後に当該物件から賃料収入を得ていた場合には、その賃料収入も合わせて返還する必要が生じることになります。

もっとも、この規定は任意規定であり、契約で法と異なる定めをすることは妨げられませんので、特約等で解除時に別の取り扱い(賃料返還不要等)の定めがあれば、原則として、契約の定めが適用されることとなります。

(解除の効果)
第545条

1 当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。

2 前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。

3 第1項本文の場合において、金銭以外の物を返還するときは、その受領の時以後に生じた果実をも返還しなければならない。

4 (省略)






ポイント

無効な契約に基づいて債務が履行された場合、給付を受けた当事者が原状回復義務を負うことが明文化された(121条の2)。ただし、改正による実務への特段の影響は想定されない。

契約が解除された場合の効果(原状回復義務)について、金銭以外の物を返還する場合の取り扱いが明記された(545条3項)。



次回も、引き続き、契約一般に関わる法改正のうち住宅(不動産)に関わる点を取り扱い、損害賠償について見ていく予定です。


ABOUTこの記事をかいた人

一橋大学経済学部卒。株式会社村田製作所企画部等で実務経験を積み、一橋大学法科大学院、東京丸の内法律事務所を経て、2015年にアクセス総合法律事務所を開所。 第二東京弁護士会所属。東京三弁護士会多摩支部子どもの権利に関する委員会副委員長、同高齢者・障害者の権利に関する委員会副委員長ほか

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