第62回 住宅(不動産)にかかわる民法改正の概要(17)



回も、契約一般に関わる法改正のうち、住宅(不動産)に関わる点を取り扱います。今回と次回の2回は、債務不履行に基づく損害賠償に関わる改正内容を見ていきます。



1 損害賠償と免責事由

契約当事者の一方(債務者)が契約に従った履行を行わず債務不履行が生じた場合、相手方の当事者(債権者)は、生じた損害の賠償の請求が可能であり、この点は改正前の民法においても定めがありました。ただ、債務者が免責される条件が分かりにくいといった指摘があり、今回、免責について詳しく定められる等の改正が行われました。

改正前は、415条後段に「債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。」と定められ、債務者に帰責事由がない場合の免責が、債務不履行のうち、履行不能についてのみに適用されるとも読める記載となっていました。

これに対し改正法では、415条1項で改正前の前段と後段が統一され、同項ただし書で、債務不履行が債務者の帰責事由によらない場合には、債務者が免責されることが明らかとなりました。

また、債務者の帰責事由の有無の判断に関し、一律の基準によるのではなく、債務の発生原因や取引上の社会通念に照らして判断されることが明らかにされました。なお、帰責事由の有無が争いとなった場合には、債務者が帰責事由のないことを証明する必要があり、証明に至らない場合には415条1項ただし書が適用されず、債務者は損害賠償責任を負うこととなります。






2 債務の履行に代わる損害賠償(填補賠償)

改正前民法においても、債務不履行に基づく損害賠償請求が認められる場合に、一定の要件のもと、債務の履行に代わる損害賠償(填補賠償)の請求が可能と考えられていましたが、この点に関する明文規定はありませんでした。

例えば、賃貸借契約において、借主(債務者)は契約終了時に目的物の返還義務を負いますが、借主が不注意(火災等)で目的物を損壊してしまったような場合、返還義務の履行は不可能となります。こうした場合に貸主(債権者)は、目的物の返還に代えて、目的物の価値相当の損害賠償を請求することができ、これを填補賠償といいます。

改正法では、415条2項の1号から3号に、これまで判例(最判昭30・4・19民集9-5-556等)等が挙げていた要件が整理され、明文化されました。

(債務不履行による損害賠償)
第415条

1 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

2 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。

一 債務の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。

(参考)
改正前415条

債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。





3 不動産実務に対する影響

本コラムの(3)から(7)で、改正前の瑕疵担保責任が契約不適合責任に統一されたことを取り扱いましたが、契約不適合責任における買主に対する救済手段の一つである損害賠償請求については、564条が確認的に定めているとおり、415条の適用があります。

1で説明したとおり、債務不履行について、債務者に帰責事由がない場合には免責されることから、契約不適合責任に基づく損害賠償請求においても、債務者(売主)に帰責事由がない場合には免責の対象となります。この点は、従来の瑕疵担保責任が無過失責任と考えられていたこととの違いが生じるため、留意が必要です。

(買主の損害賠償請求及び解除権の行使)
第564条

前2条の規定は、第415条の規定による損害賠償の請求並びに第541条及び第542条の規定による解除権の行使を妨げない。





ポイント

債務不履行に基づく損害賠償に関し、債務不履行が債務者の帰責事由によらない場合には、債務者が免責されることが明記された(415条1項ただし書)。

債務の履行に代わる損害賠償(填補賠償)の請求が可能となる場合の要件が明記された(415条2号)

改正前の瑕疵担保責任が契約不適合責任に統一されたことに伴い、契約不適合に基づく損害賠償請求においても、債務者の帰責事由が要件となることに留意する必要がある。



次回も、引き続き、損害賠償を取り扱い、損害賠償の範囲などを見ていく予定です。


ABOUTこの記事をかいた人

一橋大学経済学部卒。株式会社村田製作所企画部等で実務経験を積み、一橋大学法科大学院、東京丸の内法律事務所を経て、2015年にアクセス総合法律事務所を開所。 第二東京弁護士会所属。東京三弁護士会多摩支部子どもの権利に関する委員会副委員長、同高齢者・障害者の権利に関する委員会副委員長ほか

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