第29回 外国人に関するトラブル相談事例


昨年から続くコロナ禍によって、来日する外国人は大幅に減少していますが、それ以前は右肩上がりの推移をみせ、仕事を持ち、日本で暮らす外国人も増え続けていました。そうなると、やはり生活環境や風習の違いから、住まいに関するトラブルも多く発生してきます。今回は、外国人に関するトラブル事例を紹介いたします。



外国人×原状回復のトラブル

まずは、退去時に法外な原状回復費用を請求されてしまった外国人のA氏です。A氏は約2年半住んでいたマンションを退去したのですが、退去時に立ち合いは行われず、管理会社からも何も連絡はありませんでした。しかし、しばらくして保証会社から連絡があり、「原状回復費用45万円を立て替えて支払ったので、清算をしてほしい」と言われてしまいました。退去したマンションの家賃は6万円であり、それほど物件を汚してもいなかったA氏は、45万円は高いのではないかと指摘したところ、「日本における退去時精算のルール」という一点張りで、話し合いに応じてはくれませんでした。当然A氏は納得ができず、公平な第三者の立ち合いのもと、話し合いをしてこのトラブルを解決することとしました。



 

外国人×敷金のトラブル

 

次に、外国人社員の寮として不動産会社と賃貸借契約を結んだB社の事例です。外国人社員が居住中のある週末、本人不在時にベランダに置いてあったソファから火が出ました。発火原因は、上層階からのタバコの投げ捨てと考えられたのですが、不動産会社側からは、「本来であれば物を置いてはいけないベランダに物を置いていたのも要因の一つ」とし、敷金全額を部屋の復旧工事の費用の一部に充てるとの連絡がきました。B社としては、預けた敷金を全額使用されてしまうというのは納得ができず、ADRによる話し合いで、賠償額の減額を打診することとしました。



外国人×騒音のトラブル

最後は、入居者間の板挟みになっていたオーナーC氏の事例です。ある入居者が、C氏に「隣に住む外国人が騒いでうるさいから何とかして欲しい」と依頼をしてきたので、その外国人に注意したのですが、「未だに音が気になるし、対処の仕方が悪いので契約通りの賃料を支払うことはできない」と言われ、7万円の賃料のところ、5万円しか入金されませんでした。C氏があらためて外国人入居者に事情を聞いたところ、注意されてからは騒がないように気をつけているとのことであり、人物的にも問題があるとは感じられませんでした。次にクレームを入れてきた入居者に話を聞くと、「外国人と日本人の感覚の違い」ということを言うのみで、具体的に状況説明はしてもらえませんでした。どちらの言い分が正しいのか判断しかねたC氏は、公平な第三者を加えた4者で話し合いの場を持ち、トラブルを解決の方向に向かわせることとしました。


ABOUTこの記事をかいた人

慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、大手資格取得の専門予備校LEC<東京リーガルマインド>で講師として働きつつ、中央大学法科大学院を卒業。現在、(株)M&Kイノベイティブ・エデュケーション代表取締役のほか、(一社)日本不動産仲裁機構の専務理事兼ADRセンター長を務める。