第28回 夏に関するトラブル相談事例


コロナ禍続く令和3年も8月に入り、猛暑と言える日々が続いています。夏という季節の特徴としては、梅雨時期の雨や高い気温に加えて湿気などがありますが、それらはいずれも住環境に影響を及ぼし、これがトラブルにつながるケースも少なくありません。今回は、夏ならではのトラブル相談事例をご紹介します。



「梅雨」が原因のトラブル事例

まずは、梅雨の雨漏りが原因のトラブル事例です。A氏は屋根防水シートの上から太陽光発電設備を設置してもらいましたが、梅雨時期に雨漏りをするようになってしまいました。そこで調査をしたところ、防水シート上に大きな亀裂があることが分かりました。この亀裂は太陽光発電設備の設置以前からできていたものであり、設置工事とは直接は関係ありません。しかし、A氏は太陽光発電の契約前に事業者に対し、工事に先立っては屋根の状態を調査してもらい、設置に適するようであれば工事をし、何か問題があれば必要な措置をとってもらうよう依頼をしていました。事業者はシートの亀裂を見過ごしてしまっていたのです。しかも、太陽光発電設備を設置してしまっているので、防水シートの補修には通常時プラスアルファの費用がかかってきてしまうことが分かりました。そこで、A氏は事業者に対し、プラスアルファ分の費用を請求したいと考えていました。

事業者側で適切なチェックを行っていれば防止をできたトラブルと言えるでしょう。



 

「夏の暑さ」が原因のトラブル事例

 

次は、夏の暑さが原因のトラブル事例です。B氏は冬に入居したのですが、当初よりエアコンの調子が悪く、たびたびオーナーには修理を依頼していました。5回目の修理が終わった時、オーナーがエアコンを交換してくれるといったのですが、実行されることはありませんでした。そして夏のある日、エアコンが使用不能になってしまいました。すぐにB氏は電気店に修理を依頼したのですが、工事が立て込んでいて、1週間待たなければならなくなってしまいました。そうしている間に、とうとうB氏はひどい熱中症になってしまったのです。体調を崩したB氏はエアコンを交換してくれなかったオーナーが許せず、治療費とエアコンの交換費用を請求したいと考えていました。

修理を何度も繰り返すと、結果的に交換費用よりも高額になることもあります。それだけでなく、適切な対応をしなかった結果、熱中症などになれば、より一層の損害を賠償しなければならない可能性もあります。



「湿気」が原因のトラブル事例

最後は、湿気が原因のトラブル事例です。C氏は、大切にしていた着物を夏の湿気が原因でカビだらけにしてしまいました。C氏は物件の「湿気がたまり易いつくり」が悪いと考え、着物の弁償を求めて管理会社にクレームを入れました。管理会社が室内を調査したところ、部屋の壁にある吸気口の前に家具が配置され、空気の通り道が塞がれていたことが分かりました。管理会社からはカビの原因はC氏の家具配置であると説明を受けましたが、C氏は事前に「吸気口を塞いではいけない旨」の説明を受けなかったということが納得できず、着物の弁償請求を継続することにしました。

このように、入居者の思わぬ行動により損害が発生することもあります。一般的なトラブルが発生しうる事例はよく認識しておき、事前に説明はしておくことがトラブルを防止するのに役立ちます。


ABOUTこの記事をかいた人

慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、大手資格取得の専門予備校LEC<東京リーガルマインド>で講師として働きつつ、中央大学法科大学院を卒業。現在、(株)M&Kイノベイティブ・エデュケーション代表取締役のほか、(一社)日本不動産仲裁機構の専務理事兼ADRセンター長を務める。