今回も、前回に引き続き、改正のポイントの2点目、②発信者情報開示に関する新たな裁判手続のうち、発信者情報開示命令手続の具体的な内容を取り扱います。 発信者情報開示命令申立てに対する裁判所の決定告知の方法は、「相当と認める方法」によることとされています(非訟事件手続法56条1項)。 裁判所の決定の告知は、決定に不服のある当事者による異議申立期間の始期の基準となることから、告知日を確定するため、民事訴訟の訴状等と同じ「送達」とすることも考えられます。しかし、前回のコラムでも説明したとおり、送達は要件が厳格で、相手方が不在の場合等、送達に時間を要することもあり迅速性に欠ける懸念があることから、告知方法を裁判所の裁量に委ねる非訟事件手続法の規定を適用することとされたものと考えられます。 なお、裁判所が「相当と認める方法」については、特別送達によらない場合でも、郵便によるのが一般的と考えられます。 【非訟事件手続法】 1 終局決定は、当事者及び利害関係参加人並びにこれらの者以外の裁判を受ける者に対し、相当と認める方法で告知しなければならない。 2 終局決定(申立てを却下する決定を除く。)は、裁判を受ける者(省略)に告知することによってその効力を生ずる。 3 (以下省略) (発信者情報開示命令の申立てについての決定に対する異議の訴え) 1 発信者情報開示命令の申立てについての決定(当該申立てを不適法として却下する決定を除く。)に不服がある当事者は、当該決定の告知を受けた日から1月の不変期間内に、異議の訴えを提起することができる。 2 (以下省略) 発信者情報開示命令申立てに対する裁判所の決定の効力は、決定の告知により生じることとされています(非訟事件手続法56条2項)。 効力発生時期を決定の「確定」時点とすることも考えられますが、裁判所の決定に対する異議の訴えの期間が、当事者が決定の告知を受けた日から1か月と定められていることから(14条1項)、確定を基準時とすることは、発信者情報開示命令申立事件における迅速性の要請に合致しないと判断されたと考えられます。 発信者情報開示命令申立てに対する裁判所の決定は、裁判書を作成することが求められていますが(非訟事件手続法57条1項本文)、その理由については、「要旨」で足りるとされています(同条2項2号)。 これは、決定について詳細な「理由」の記載を要件とした場合、書面の作成に時間を要する可能性があり、迅速性の要請に合致しないとの判断によると考えられます。 「理由の要旨」の記載方法は、個別の事案に応じて、裁判所の裁量に委ねられますが、簡潔な記載にとどまることも想定されますので、不服のある当事者は異議の訴えを提起し、訴訟手続の中で主張・立証を行って、要件該当性を争うことが想定されます。異議の訴えについては、次回以降に扱う予定です。 発信者情報開示命令申立てに対する裁判所の決定の効力が生じたにもかかわらず、開示義務を負う当事者が義務を履行しない場合、決定を債務名義(民事執行法22条)として、強制執行手続により実効性が担保されています。 もっとも、強制執行の手続においても、開示を直接的に強制することはできないため、金銭の支払義務を課して履行を促す「間接強制」の方法が想定されています。 【非訟事件手続法】 1 終局決定は、裁判書を作成してしなければならない。ただし、即時抗告をすることができない決定については、非訟事件の申立書又は調書に主文を記載することをもって、裁判書の作成に代えることができる。 2 終局決定の裁判書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。 発信者情報開示命令申立てに対する裁判所の決定告知の方法は、「相当と認める方法」によることとされている(非訟事件手続法56条1項)。 発信者情報開示命令申立てに対する裁判所の決定の効力は、決定の告知により生じることとされている(非訟事件手続法56条2項)。 発信者情報開示命令申立てに対する裁判所の決定は書面の作成が求められるが、その理由については「要旨」で足りることとされている。 発信者情報開示命令の実効性は、強制執行(間接強制)により担保される。 次回も引き続き、改正のポイントの2点目の発信者情報開示に関する新たな裁判手続の具体的内容を取り扱う予定です。
1 決定の告知方法
(終局決定の告知及び効力の発生等)
第56条
第14条
2 決定の効力発生時期
3 理由の記載
4 決定の実効性の担保
(終局決定の方式及び裁判書)
第57条
一 主文
二 理由の要旨
三 当事者及び法定代理人
四 裁判所
ポイント