ヘーベルハウスの実際の施工について、今回は雨仕舞と配管工事編となります。
なお、筆者が建てた2020年時点(1911仕様)時点のお話なので、細かい点で最新のヘーベルハウスと差異があるであろう点はご容赦ください。
前回までは…
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スレート屋根
北側斜線制限の都合上、一部の屋根は斜め屋根になるケースがあります。ヘーベルハウスは基本的に睦屋根で、ヘーベル版の屋根の上に防水シートを貼るのですが、斜め屋根はスレート屋根になっています。
まずは、屋根部分にアスファルト系防水シートを貼ります。

その後、コロニアルグラッサのスレート屋根を貼ります。

こちらの製品ですね。
スレート屋根は、実は耐久性に問題があります。詳しくは以下のブログで。
耐久性を重視するなら瓦が良いのですが、ヘーベルハウスの人に瓦屋根にはできないのか聞いてみたところ、「瓦屋根は重量があるため、トップヘビーになってしまう。重量に耐えられないということはないが、耐震設計上瓦屋根にすると揺れが増大してしまうので、現時点での仕様では採用していない」という理由でした。
上記ブログで言及があるような「30年もちます」なんてことは言われず、「10年点検でメンテナンスが必要になるケースもあるので、修繕費用は見込んでおいてください」とのことです。
陸屋根とベランダの防水
ヘーベルハウスの睦屋根の防水工事です。まず最初に実施するのが、ヘーベル版とヘーベル版の隙間を生コンで埋める作業です。

その後、防水シートを敷き詰めます。
使用される防水シートはサンロイドDNシートという製品でした。

同様の処理はベランダやバルコニーの床にも実施され、施工完了後はこんな感じになります。

床防水工事
室内床にも防水工事を実施します。床ヘーベル版とヘーベル版の隙間に生コンを流し込み隙間を埋めていきます。


このように、床の隙間を完全に埋めます。
これはのちの工程で水密性が求められるため、しっかりと施工されます。
外壁の目地打ち
過去に何度か、ヘーベル版は水に弱いというお話は書いたかと思います。ヘーベル版、つまりALCはその構造上スポンジのようなコンクリートなので水を吸い込みやすい性質があり、氷点下になるような地域ではALCの内部に侵入した水が凍って膨張することでALC自体にクラックを発生させるおそれがあります。
そのため、ALCを用いる場合には防水工事が何よりも大事です。
ヘーベルハウスでは外壁のヘーベル版とヘーベル版の間に隙間がありますので、これをキレイに埋めていく必要があります。
この工程をヘーベルハウスでは目地打ちとしています。
まず、目地を打つヘーベル版の隙間にプライマーを塗布します。
プライマーには以下の製品を使っていました。

これを丁寧に塗っていきます。
ヘーベル版とヘーベル版の隙間に挟まっている白い物体は、耐火シートです。

窓サッシとヘーベル版の隙間などの部分にも、マスキングしつつしっかり塗布します。

そして、いよいよシーリング材です。
以下のポリウレタン系のシーリング材を使用しています。
この製品を出しているハマタイト社は、横浜ゴム系の会社(今は譲渡されてスイスの企業傘下)でして、ここでもタイヤ会社の製品が活躍しています。

これを丁寧に注入していきます。

数日乾かすと、硬いゴムのように弾性をもった目地になります。
この目地は、地震の揺れでも剥がれず破けないということになっています。

ただ、やはり耐久年数は外壁ヘーベル版には劣るので、外壁塗装メンテナンスの際に打ち替えが必要だとのことです。
配管工事
雨仕舞工事と並行して、室内配管工事も実施します。水回り配管(排水)
水回り配管には、上水と下水があります。下水にも、キッチンやトイレ等の排水管と、雨樋等の雨水の排水があります。
ヘーベルハウスではこの排水管は極力室内を這わせないように工夫しており、以下はトイレの排水管ですがすぐ横の壁から外に出るようにしています。
これは排水の騒音をなるべく軽減するための措置だそうです。
北海道でこれをやると配管が凍結してしまうので、温暖な地域だからこそできる手法ではあります。

これら排水管は外の縦管に接続され、地中の排水管に流れるようになっています。

トイレやキッチンの配管には、以下のような空気取り入れ用の通気弁が取り付けられ、排水がスムーズに進むようになっています。
この通気弁は基本的に壁の中に隠されますが、メンテナンス用に小さなハッチも取り付けられます。
(昔の北海道の住宅ではトイレの配管の部分に上向き蛇口がついており、真冬に配管とトイレ凍結を防ぐために水を落とす際にはこの上向き蛇口を空けて配管を空にするという操作をしていたことを懐かしく思います)

水回り配管(上水)
一方、上水系配管は一部の水栓を除きボイラーを経由するため一箇所に集約されてから、室内に展開されます。
天井からぶら下がっているのが、ヘッダーという給水分岐装置です。
実際に配管されるとこんな感じに、水色の冷水とピンク色の温水が仕分けされます。

電気系配線
次に電気系の配線です。軒天の上を這わせるような配線は、以下の写真のホースを通して、そのホースの中に配線を通します。

外壁に取り付けられるインターフォンや電灯の配線は、外壁のヘーベル版に穴を空けて筒を通してそこに配線を仕込みます。
この筒の周りには追々シーリング材で防水処理が行われます。

電気は当たり前ですが、電柱から配線を分岐してきて自宅まで引き込みますので、外壁部分に電線の引き込み口が取り付けられます。
インターネットの光回線もこの引き込み口から室内に引き込みます。

室内に引き込まれた電気配線は、メインの電力ケーブルをブレーカーの場所まで引き込み、ブレーカーから各部屋に分岐して行きます。

階を跨ぐ部分は、専用のパイプスペースを経由するようになっています。

外接配管
井戸水や浄化槽、プロパンガス採用をしていない様な都市部の場合、通常は地方自治体の運営する上下水管及び都市ガス管と接続を行います。上下水配管については、一般的には市の委託を受けた業者が本管から住宅向けの分岐配管を施工し住宅に接続してくれます。
ガスも同様です。
水道管の本管取り出しは専用の器具を使って直接本管に穴を空けて分岐管を取り付けるため、一時的な断水等発生させることなく工事が可能だそうです。
以下の写真は実際の本管取り出しの模様です。
写真左側の太いグレーの配管が下水管本管につながる分岐管、機械が刺さっている青い配管が上水管、上の黄色い配管が都市ガスの配管で、大体どこの市町村でも配管の色はこのようになっているそうです。

この配管工事は本管と自宅の間の距離によって費用が変わってくるので(遠ければ遠いほど高くなる)、立地によっては金額が大幅(3桁万円)に変わります。
土地探しの際に、本管の位置関係も確認すると良いですよ。
まとめ
以上、雨仕舞工程と配管作業工程について記載しました。雨仕舞は建て方工事の直後に直ちに実施されますが、配管作業については外壁に穴を開けるタイミング(配線配管引き込み口の作成)と、その穴に実際に配線を引き回す工程、引き回した配線を実際に室内の必要な位置まで配線する工程に分かれています。
また、水道管やガス管は市町村側の業者の都合で工程が前後する場合がありますので、建て方の直後に必ずしも実施されるわけではありません。下水が最優先で設置される傾向にはあるようですが。
というわけで、次回は内装工事工程の説明となります。