ヘーベルハウスの家を建てる手順~躯体工事後編

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ヘーベルハウスの実際の施工について、今回は躯体工事後編となります。

なお、筆者が建てた2020年時点(1911仕様)時点のお話なので、細かい点で最新のヘーベルハウスと差異があるであろう点はご容赦ください。

前回までは



 

躯体工事の細かい部分について

前回までは、柱や梁、床や壁のへーベル版、建具の設置の大まかな流れについて解説しました。
今回は、もう少し細かい部分についての解説を行います。

 

剛床

ヘーベルハウスの外壁であるヘーベル版は、耐震性能には寄与していないということは過去に何度か書いてきたと思いますが、唯一床のヘーベル版は耐震性能に大きく寄与する部材となっています。


剛床(ごうしょう)とは、変形しないほど硬い床です。
在来工法などでは、床板の下には根太が必要ですが、剛床工法の場合はこの根太が不要になります。
RC造などでは、床スラブがそもそも非常に剛性が高い部材なので剛床工法になります。

ヘーベルハウスは鉄骨ラーメン構造ですので、地震力を基礎と柱と梁全体に伝えることで全体で分散して地震に耐えます。
一方、床は水平力に耐える必要があるのですが、剛床ではない場合一部の床梁にのみ水平力がかかってしまうため、床全体に水平力を伝え床全体で耐えるという目的を達成するために剛床を作ります。

では、ヘーベルハウスではどのように剛床を作っているのか?実際の構造を見ていきましょう。

概要は上の図にある通りです。
ヘーベルハウスの床に使われるヘーベル版は100㎜厚で、壁に使われる75㎜厚の部材とは違い床及び天井専用の部材で、一片の重さは約100kgあるそうです。
ヘーベルハウスではこの部材を床ヘーベルと呼称しています。

この床ヘーベルを鉄骨の梁の上に敷き詰めていきます。


要所要所に剛床金物があり、金物にかかる部分についてはヘーベル版をカットして形を合わせて設置します。


剛床金物には鉄筋が取り付けられて、ヘーベル版とヘーベル版の間の部分に沿うように置かれますが、これはヘーベル版が乾燥などで反ってしまわないように抑えるための部材となっています。


建て方工程では床ヘーベル版を組むところまで実施されますが、後の工程でヘーベル版とヘーベル版の間にモルタルを流し込み水密処理を行います。


 

斜線制限の斜め屋根

ヘーベルハウスは都市部の密集した住宅地を想定したハウスメーカーであり、そういった立地について回るのは『日影規制』です。
詳しくは以下のサイトをご覧になっていただければよいかと思いますが、要は周りの家の日当たりを最低限確保するための高さなどの規制です。


そして、上記のサイトにも記載があると思いますが、『北側斜線制限』は密集住宅地で3階建て以上の住宅だと大体は避けては通れない制限となります。

この規制をクリアするために、基本は睦屋根のヘーベルハウスでも一部切り欠きのように斜めカットされた屋根になるケースがあります。
ヘーベルハウスではこの北側斜線をそもそも想定した鉄骨部材が仕様化されており、予めこの角度に合わせた鉄骨が組まれます。


この斜めになった屋根にも、天井同様にヘーベル版を固定していきます。
また、斜めになっている面についてはブレースも組まれます。


 

 

ユニットバスの設置個所

ヘーベルハウスでは、ユニットバスを設置する場所の床は、その階の床レベルよりも掘り下げた床レベルにする必要があります。
お風呂が一階にある家ではあまり気にすることはないのですが、お風呂が2階より上の階に設置される場合には、ユニットバスの階下の天井が低くなってしまいます(あくまで2020年時点での仕様なので、今から建てようとしている人はちゃんと担当に確認してください)。


 

ベランダ壁

ヘーベルハウスではベランダの手すりを選ぶことができます(建築敷地の規制で選べないものもあるのでその点は注意が必要です)。

まずは腰壁タイプ。


これはヘーベル版でできている壁タイプのベランダ手すりです。壁の上にある手すりはつけることもつけないこともできます。

展示場でよく見かけるパネルタイプはこちら。


このタイプは開放感がある分、外から丸見えでもあります。
この透明パネルがスリガラスのような半透明になっているタイプもあります。

外構のフェンスにもよくある横浅タイプもあります。


 

腰壁タイプの手すりは、以下のように鉄骨の枠に、ヘーベル版をはめ込んで作ります。


 

螺旋階段の基部

ヘーベルハウスでは屋上利用する場合に、外階段をつけることができます。
面白いオプションの一つに螺旋階段があります。

この螺旋階段は、中央の鋼材の棒にプロペラのように階段の踏み板を取り付けていくのですが、螺旋階段の重量は中央の鋼材一本で支えているため、構造上しっかりとした土台が必要です。
ヘーベルハウスの場合、鉄骨構造なので構造体の鉄骨に直接螺旋階段の基部を取り付けます。


この基部から先の実際の階段部分は、ヘーベルハウスの外部階段を外注している大和工機株式会社さんで組み上げてくれます。


 

水切り設置

基礎コンクリートと外壁の壁ヘーベルの繋ぎ目となる部分は、こんな感じになっています。


このままでは、基礎コンクリートと壁の間に水が侵入し放題なので、水切りを設置します。


水切りパーツも場所に合わせて規格化されているので、現地で長さ合わせのために切断等不要だそうです。


こんな具合に家の周り全周に取り付けていきます。

また、同様に軒下にも水切り板を取り付けていきます。

軒下はこのようにヘーベル版と鉄骨がむき出しの状態です。


まず、水切り板を固定するためのガイドレールを取り付けます。


ガイドレールに沿って、水切り版を取り付けていきます。


水切り板と水切り版の繋ぎ目は実はピッタリとくっついているわけではありません。


もちろんこの隙間の下には、下板となるパーツが付けられているので無防備に隙間が空いているわけではありません。
たまにこの隙間を見た施主から「施工不良」と言われるケースがあるそうですが、これはわざと隙間を開けていて、地震の際に建物が揺れたときにここをしっかりと密着させると、建物のたわみ(鉄骨住宅は地震力に対して建物がたわむように作ってある)が発生したときに、水切り版と水切り版がお互いにぶつかり合って山脈ができるように曲がってしまうことを避けるために、わざと隙間を開けているそうです。

 

TMD設置

3階建て以上のヘーベルハウスには、制振装置であるTMD(チューンド・マス・ダンパー)が装備されます。
詳しくは、以下竹中工務店のページがわかりやすいので参照してみてください。


過去にも何度か、鉄骨ラーメン構造は地震の際に揺れるようにできていると書いていますが、ただただ揺れに任せるだけだと建物の中が大変なことになるので、高層ビルなんかでは免震や制振といった揺れをある程度抑える仕組みが導入されています。
TMD自体も、タワーマンションや高層ビルでは当たり前のように搭載されていますが、近年では鉄骨系ハウスメーカーでも住宅に採用されるケースは増えています。
ヘーベルハウスはとにかく耐震性能を最優先にしているようなハウスメーカーですので、制振装置がオプションではなく標準装備となっています。

重量鉄骨3階建てだと、オイルダンパー制振装置であるサイレスと、


このTMDがセットとなり、ヘーベルハウスの制振装置となっています。TMDについてはヘーベルハウスの公式HPでも特に宣伝していないのは残念ですね。

早速こちらが、TMD装置です。
この装置だけで重量620kgあるそうです。
ブリジストンと書いていますが、あのタイヤのブリジストンです。タイヤメーカーは免震装置や制振装置で使われるゴム部品も作っているので、地味にこういった建材もラインナップにあります。


このTMDをクレーンで吊り上げ、3階天井に取り付けます。


鉄骨に固定し、赤いテープで固定されている芯を抜くと動作開始です。
TMD自体が建物の揺れに対してその重量振り子をもってして反作用を働かせるのですが、このピンを抜かないと振り子が動かないので、設置後にピンを抜くわけです。


実際に住み始めてからは、最大震度4程度の地震にしか遭遇していませんが、この装置のお陰でどの程度揺れが軽減されているのかは正直わからないですね(笑)
5強を超える地震のときにきっとその真価を発揮してくれるのだろうと思います。

 

へーベル版の補修

建て方工事をどんなに慎重に進めても、ヘーベル版が一部欠けてしまったりします。
そもそも工場から輸送する段階で、一枚一枚梱包材で保護されているわけではありませんから、到着した時点で多少の欠けも出てしまいます。

また、固定するためにヘーベル版自体にネジ穴が開いているので、その穴がそのまま残っている状態でもあります。こんな感じに。


流石に見栄えが悪いので、最後にこの穴や欠損部の補修を行います。

手順としては、まずは欠損部分にプライマーを塗ります。
このプライマーは『モルタック』という製品を使います。もちろん旭化成製品です。

次に、ALC専用の補修材である『サンモルC』を水に溶かして粘土状にしていきます。もちろんこれも旭化成製品です。



モルタックを塗布した部分に、このサンモルCをコテで塗って整形していきます。


職人さん曰く「外壁の目地によって難易度が違う」とのこと。今回のマイクロストライプはシャープな直線が特徴なので難しい部類に入るそうです。
と言いつつも、キレイに仕上げてくれました。


この補修作業に結構時間をかけてくれていて、家と家の間の壁みたいなほぼ見ないでしょうって場所でもしっかりキレイに補修してくれました。

というわけで、躯体工事編はここまでです。
次回から内装工事へと入っていきます。

 

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ABOUTこの記事をかいた人

2020年にヘーベルハウス(FREX AXiii)で家を建てたヘーベリアンです。 当時の仕様のヘーベルハウスでの家造りの流れ、建築の流れや、住宅ローンについての記事を投稿していました。 2022年7月をもって、コダテルブロガーを退任したため、既存の記事以降は更新予定はありません。