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第14回 ハウスメーカー評価のまとめ 断熱・気密性能編

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れまで各社の特徴を、実際のインスペクション経験に基づき記事としてきましたが
これからは複数回にわたり、各項目ごとの評価まとめを書いていきます。

ハウスメーカー選び、もっと言えば家づくりのご参考になればと思います。

過去の記事では、各社の実力は次の通りの評価にしました。

積水ハウス(鉄骨) :断熱★★(2)/ 気密★★(2)
ダイワハウス    :断熱★★★(3)/ 気密★★(2)
旭化成ホームズ   :断熱★★★★(4)/ 気密★★(2)
パナソニックホームズ:断熱★★(2)/ 気密★★(2)
住友林業      :断熱★★★★(4)/ 気密★★★★(4)
積水ハウス(木造) :断熱★★★★(4) / 気密★★★★(4)
三井ホーム     :断熱★★★★★(5)/ 気密★★★★★(5)
住友不動産     :断熱★★★(3)/ 気密★★★★(4)
一条工務店     :断熱★★★(3)/ 気密★★★★(4)
セキスイハイム   :断熱★★(2)/ 気密★★★(3)
ミサワホーム    :断熱★(1)/ 気密★★★(3)

まず、断熱性能の特徴ですが、基本的には木造のほうが鉄骨より優位性があるという評価をしています。

大きな理由は、鉄骨の構造躯体はあくまでも「熱伝導率の高い鉄」ですから、ヒートブリッジの恐れが高く、木造に比べて断熱性能が低くなります。

写真はセキスイハイムのユニット工法ですが、赤外線カメラのサーモグラフィ画像で、外壁の柱部分は、はっきりと温度変化(ヒートブリッジ)が確認できますね。

各社、設計上鉄骨柱周りの断熱施工が難しく、このあたりの標準施工にかなり苦戦していると思います。

パナソニックホームズの写真でも、断熱欠損が見て取れます。


また、鉄骨の最上階はヒートブリッジが起きやすい設計になっています。

鉄骨の上側(外部)か、下側(居室側)どちらに断熱を施工するかで違ってきますが
鉄骨の下側で断熱をすると、どうしてもヒートブリッジが発生しやすくなります。

下記の写真は、鉄骨のダイワハウスですが、最上階柱上部は温度変化が顕著です。


このような局所的なヒートブリッジは結露の原因になり、最悪はカビが発生する可能性が否めません。木造に関しての評価の差は、現場の技術力や管理の徹底がされているかどうかに左右されています。

三井ホームの屋根断熱(DSPという商品)は断熱材の隙間がほとんどなく、確かに性能は高いと評価できるでしょう。

一方でミサワホームはパネル工法で、工場にてパネル内に断熱材を入れ込んできます。工場出荷時には品質が確保出来ていても、雨の日のパネル吊レッカー作業・パネル緊結時の断熱材めくり戻し忘れ・石膏ボードのビス施工との関係性を考えると、断熱性能自体に疑義が残る作り方です。

上の写真は、ミサワホームのパネル緊結の様子ですが、ボルトを締めこむ際に断熱材(青いビニールに断熱材が入っている)をめくらなくてはいけませんが、これを戻し忘れるケースを見受けます。

下の写真は三井ホームですが、壁の充填工法は職人により隙間が出やすい施工方法です。


管理が厳しいとされているハウスメーカーでもこの程度の指摘はよく目にします。

一方、気密性能でも、鉄骨よりも木造が数値をとりやすいのが特徴です。また、木造の中では枠組壁工法(ツーバイ)に優位性があると考えます。

最近では、耐力壁という面材を在来工法でも使用していますが、要するに「木の箱」を作ったほうが気密は取りやすいということですね。ハウスメーカーの木造は充填式の断熱工法を採用している会社が多く、施工の丁寧さで大きく気密性能が変わってきます。

写真は、住友林業ですが断熱材の防湿層をきちんと連続させていて、このように注意深く施工をすれば気密はある程度確保できます。

ツーバイに関しては、基本的にベーパーバリヤ(防湿層)を施工するので、それに伴って気密性能が高くなってきます。

余談ですが、前回コラムで説明した「耐震性能」と「断熱・気密性能」は少し性能面では違いをもって考えたほうがいいと思っています。どういうことかというと、断熱性能に関しては各社、基本的には断熱材の熱抵抗値で謳っていますよね。つまり「熱を伝えにくい材料をどの厚みで設計しているから、計算上は断熱に優れている」と宣伝しています。

しかしながら、実際には完成後に「断熱性能を計測する機械は存在しません」から、あくまでも机上の計算を信用し、あとは消費電気料金で判断するしかないのです。

また、気密に関しても以前はC値(相当隙間面積)で評価していましたが、現在はあまり活用されなくなっています。C値は、家にどの程度の隙間が存在するかの目安の数字ですが、計測時にはガラリなどの隙間を目ばりしてから計測します。

ですから「実際の家」とは、あまり関係がないと言っても過言ではありません。

最近では「性能」を謳う営業スタイルが目立つように思います。わかりやすく、選択基準には当然なりますが、それだけに目を奪われるのもどうかと思います。

たとえれば車の燃費性能がわかりやすいでしょう。某車はカタログ値で「燃費:40.8Km/L」をアピールしていますが、実際にはそんな走行距離にはなりませんよね。あくまでも実験結果の話で合って、実際には「アクセルやブレーキのかけ方」・「ハンドリング」・「暖気運転の有無」・「路面状況や外気温」で、都度変わってくるはずです。カタログ数値の半分も走ればいいのではないでしょうか。

しかも最近では、偽装問題もよく耳にしますから、本当の数字は??という状態です。

家も同じで、実際の各家族の「暮らし方」に多分に影響されてきます。「窓を開けるのか」・「風呂の回数」・「キッチンでの炊事の仕方」・・影響があるものを挙げればきりがありません。

本来、家は材料性能単体で判断するのではなく、トータルで性能を評価しなければいけませんから、そのあたりをわかったうえで依頼先を選んで頂ければいいかな・・と思います。

ハウスメーカー評価のまとめ 断熱・気密性能編は以上です。
次回は、耐火編を掲載する予定です。

市村崇 このコラムの執筆者
市村崇(イチムラタカシ)
一級建築士・ホームインスペクター。大手HMの現場監督を経て2007年に設計事務所・工務店を設立、10年間で500棟以上の施工管理を行う。2013年に(社)住まいと土地の総合相談センター副代表に就任。建築トラブルを抱える多くのクライアントの相談に乗る傍ら「絶対に後悔しないハウスメーカー&工務店選び 22社」など多くの本を企画、執筆している。

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