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第17回 ハウスメーカー評価のまとめ 施工力編

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れまで各社の特徴を、実際のインスペクション経験に基づき記事としてきましたが
今回は施工力の評価まとめを書いていきます。

ハウスメーカー選び、もっと言えば家づくりのご参考になればと思います。

過去の記事では、各社の実力は次の通りの評価にしました。
積水ハウス(鉄骨) :★★★★(4)
ダイワハウス    :★★(2)
旭化成ホームズ   :★★★★★(5)
パナソニックホームズ:★★(2)
住友林業      :★★★(3)
積水ハウス(木造) :★★★★(4)
三井ホーム     :★★★(3)
住友不動産     :★(1)
一条工務店     :★(1)
セキスイハイム   :★★★(3)
ミサワホーム    :★(1)

本コラムも前回と同様、一言で評価するのは難しいのですが、これまでのインスペクションから下記を中心に評価しています。

社内の管理・統率体制:これは、社内マニュアルの整備、ルール外の対応力、現場監督のスキルやモラルまた工程調整などから判別。

職方や業者のスキル:致命的な不良や手抜き有無、現場ごとの安定・均一化した品質管理、現場の安全管理や整理整頓状況など。

繁忙期の対応:応援職人の管理などです。

まず、積水ハウスの施工力に関してですが、子会社の積和建設がすべての工事を担っているのが特徴です。言い換えれば100%自社施工ということですから、メリットとしては全国で品質が均一化しやすい・現場での不具合が全国展開で改善されるスピードが速いということでしょう。半面デメリットは、型式認定で完全自社施工ですから、第三者の目がなく「ブラックボックス」と言わざるを得ませんね。

型式認定とは、建築基準法で定められていますが『いつも同じ部材を同じ計算方法で、同じように大量生産しているから、建築確認審査を一部簡略化してもいいよ』という事で、特許のようなイメージです。

写真は、断熱検査時のサーモグラフィ写真です。断熱材の入れ方が悪く、隙間がわかります。

ダイワハウスは施工部隊を自社では持っていません。つまり、第三者へ一括発注です。工務店や建設会社に、基礎から仕上げまで一式をすべて発注し、管理をダイワハウスが実施する方式ですね。

消費者側のメリットは、正直あまりないように思います。会社の経費削減や、繁忙期・閑散期の職人、業者の増減を気にしないでいいという作り手側のメリットは大いにありますが・・

『優秀な施工店、優秀な監督であればいいものが建ちますが、反対だと大事になる』ことが簡単に想像できると思います。

写真はダイワハウスの防水検査の時のものです。屋根の防水(ルーフィング)が破損したままであり、チェック不足が否めません。

旭化成ホームズは施工を子会社の旭化成住宅建設と、指定工事店で施工を実施しています。特徴としては、社内マニュアルが大変よく整備されていて、間違いが起きないような施工をしているのが特徴です。工業化製品として、部材寸法はもちろん作る手順などまで細部にわたりルール化されています。

特に、基礎工事と鉄骨躯体工事(構造)に関しては、ハウスメーカーの中では一番と言っても過言ではないでしょう。

その躯体工事での指摘写真が次です。ヘーベル板の欠けが補修忘れとなっています。

パナソニックホームズに関しては、もともとフランチャイズ方式の部材供給メーカーであったこともあり、ようやく建築屋としての意識が出始めたかな・・というのが正直な印象です。施工エリアによっては品質のばらつきが多く、現場監督も知識不足な点が否めず、時として大きな問題が発生しうる可能性があります。

写真は、鉄骨の柱の継ぎ目にある余盛(溶接した際に発生する鉄くず)を、グラインダーで削りすぎてしまった様子です。

木造メーカーでは、住友林業から解説します。子会社である住友林業ホームエンジニアリングがおよそ40%の工事を担っており、その他を指定施工店が建てています。

各社に共通しますが、指定施工店とは資本提携のない一般の工務店ですが、工務店自身では主な営業をせずに、ハウスメーカーの建築工事を主体に仕事をしている形です。各メーカーともに、守秘義務の順守が必要であり施工や安全教育なども実施しています。

現在では、大工さんの数が大幅に減少してきています。大工さんに頼らざる得ない工事内容が多いため、大工数の確保や教育が課題です。

木造では木材の含水率管理が非常に重要ですが、写真では日本農林規格規定値14%以下を大幅にオーバーしている様子です。

三井ホームはオープン工法である枠組壁工法です。いわゆる『ツーバイ』ですが、オープン工法とは日本全国、誰でも使っていい建て方ということですね。鉄骨メーカーに多い「型式認定工法」は、その作り方が特殊な為、専属の職人さんが必要になりますが、オープン工法では、皆が知っているつくり方の為、職人による技術のばらつきが少ないことや繁忙期の応援業者などへの対応も型式認定に比較すれば容易だと思います。

壁は、充填式の断熱材。丁寧な施工が求められますが、サーモグラフィー写真では、上部に隙間がわかります。

住友不動産もツーバイです。ツーバイは構造を「フレーミング工事」と呼び、大工さんではなく「フレーマー」という職人が施工を担当します。フレーマーは数が少なく、施工力を確保するのが難しい一面もあります。同時に、フレーミング工事と次のフレーミング工事が空いてしまうと、職人は仕事が途切れ途切れになってしまうため、稼ぐことが出来ませんから、ツーバイはある程度棟数をこなしている会社でないと専属のフレーマー確保が難しいといった特徴があります。応援職人は、その場しのぎが多い為に仕事の粗さが時として目立ちます。

ツーバイの壁下地は「耐力壁」という、構造上重要な役目を持っています。釘打ちの管理は命題なのですが、初歩的な打ち忘れなども・・

一条工務店はあまり情報が出てきませんが、現在フィリピン工場で稼働し多くの建築部材を自社制作しています。その一つは、複合パネルという外壁(中は断熱材まで、外部はタイルまで工場で貼ってくる)を制作し、パネル化した外壁を現地で組み立てる方式をとっています。

現場での品質管理は目視できない部分が多く、工場での製品検査にかなりの比重がかかっています。施工力という面では、他社とは単純比較できない施工方法でしょう。

写真は複合パネルの建て方完成時の様子です。1階と2階の間は、現場でジョイント工事をしますが、雨が入ってしまう作りなので管理面では、非常に難しい点が上げられます。

ミサワホームは、木質パネル接着工法という型式認定です。工場で断熱材が入ったパネルを制作し、現場で組み上げる方式です。昨今のコンプライアンスから各社、安全管理を徹底する中、ヘルメットの未着などが目に着くこともあり、現場の管理体制に若干の不安を感じざるを得ません。工場制作されたパネルはボルトで緊結するのですが、過去のインスペクションでは、ナットの締め忘れ事例もあります。

パネル隅にある穴から緊結しますが、断熱材(青)の戻し忘れもよくある指摘事項です。

ハウスメーカー評価のまとめ 施工力編は以上です。
次回は、各社のアフターメンテナンス編を掲載する予定です。

市村崇 このコラムの執筆者
市村崇(イチムラタカシ)
一級建築士・ホームインスペクター。大手HMの現場監督を経て2007年に設計事務所・工務店を設立、10年間で500棟以上の施工管理を行う。2013年に(社)住まいと土地の総合相談センター副代表に就任。建築トラブルを抱える多くのクライアントの相談に乗る傍ら「絶対に後悔しないハウスメーカー&工務店選び 22社」など多くの本を企画、執筆している。

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