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第6回 住友林業株式会社の評価

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友林業株式会社は、もともとは公害対策の植林事業から派生、創業した会社です。そのため、林業を営む山林を多く保有し、日本の木造住宅業界を材木・建材で牽引してきた実績があります。

住友林業 総合評価:★★★★(3.56)
耐震:★★★(3)
断熱:★★★★(4)
気密:★★★★(4)
耐火:★★★(3)
遮音:★★★★(4)
耐久:★★★(3)
設計自由度:★★★★★(5)
施工力:★★★(3)
アフター体制:★★★(3)

1975年にスミリン住宅販売として住宅事業に参入しました。

商品の構成は、もともとマルチバランス工法という軸組(在来)工法だけでしたが、1986年にナプコホームというツーバイフォー専業メーカーを買収。

住友林業ツーバイフォー(後にスミリンツーバイ)としてツーバイフォーも手がけましたが、結局社名は住友林業株式会社としてツーバイフォーもできますというのが現在の体制です。

その後木造ユニット工法も手がけたのですが、10年後に撤退しています。

2005年にビッグフレームを商品化し、現在では主力商品となっています。

マルチバランス工法は、旧来からの軸組(在来)工法ですが「きずれパネル」という斜め格子に組んだパネルを、構造用合板としているのが特徴的です。

一方のビッグフレーム工法は最大105x520ミリの柱を使用し、梁勝ち架構となっており上下階の柱はフィンボルトというボルトで緊結しています。

外壁下地はマルチバランス同様「きずれパネル」を使用していますが、この「きずれパネル」は柱や梁に釘打ちをして固定します。その為、斜め格子の交点にしか釘打ちができず、複雑な外壁形状の場合には釘打ちに苦労するようです。またパネルが格子組みになっているゆえ、防水紙を止める際に外側の格子にしか止め付けができないので、防水紙と内側の格子組とに隙間ができてしまいます。

外壁を貫通する穴(換気扇や電気配管など)周りのコーキングが防水紙と密着しない事例をよく見かけます。

営業スタイルに大きな特徴はないですが、契約段階の見積もり書はシリーズ商品の金額は1式計上で提出されます。

細目金額がわかるのは、打ち合わせで変更要望した部分の提案見積のみですので、見積もり増減の内訳がチェックしにくいように思います。

施工は子会社の住友林業ホームエンジニアリングと一般工務店との2通りで、どちらかといえば工務店発注の方に品質のバラつきが多い傾向です。ビッグフレームは、大断面の柱と梁をボルトで緊結するのですが、ボルトとナットの締め付け完了時にマーキングを実施しない為、締め付け管理手法に疑問が残ります。

また数年前から、サッシ周りのコーキングを両面テープのヒモ状のものに仕様変更したのですが、「防水紙と上手く密着しない」・「サッシ周囲を回して接合する部分が上手く接着しない」事例を見かけます。現場監督も以前のコーキングの方が良かったと苦労しているのが現実でしょう。

「きずれパネル」は斜め格子なので、雨漏り調査の際には、入水箇所を特定するのに大変苦労します。雨漏れ入水箇所から侵入した雨水が斜め格子を伝い、いろいろな方向に広がっていくので、室内に漏れた箇所との因果関係の特定が難しい作りとなっています。

住友林業としてはビッグフレームを主力と考えているようですが、部材搬入ができにくい敷地の場合には、マルチバランスを提案することが多いようです。

防水の不具合実例です。



ビッグフレームのフィンボルト


住友林業株式会社の評価は以上です。

次回はホームインスペクションでの実体験に基づいて、積水ハウス株式会社(シャーウッド)を評価します

市村崇 このコラムの執筆者
市村崇(イチムラタカシ)
一級建築士・ホームインスペクター。大手HMの現場監督を経て2007年に設計事務所・工務店を設立、10年間で500棟以上の施工管理を行う。2013年に(社)住まいと土地の総合相談センター副代表に就任。建築トラブルを抱える多くのクライアントの相談に乗る傍ら「絶対に後悔しないハウスメーカー&工務店選び 22社」など多くの本を企画、執筆している。

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