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第26回 不動産会社が原因で引き起こされたトラブル事例

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消費者の立場では防止が難しいことも…

不動産会社は、宅地又は建物の取引の専門家として、購入者等の利益の保護及び円滑な宅地又は建物の流通に資するよう、公正かつ誠実に宅地建物取引業法に定める事務を行わなければなりませんが、業務上のよくある落とし穴として、「これくらい、大した問題にはならないだろう」という甘い認識が大きなトラブルを招くこともあります。これについては、消費者の立場ですと未然に防ぐことが難しいケースもあるかもしれませんが、少しでも疑問や不安に感じたことについては、事業者に確認をすることが大切であるといえるでしょう。

中古マンション購入後に滞納金が発覚

はじめに紹介する事例は、「滞納管理費及び修繕積立金の説明不備」に起因するものです。買主A氏は、売主業者であるK社から中古のマンションを1,600万円で買い受けました。なお、重要事項説明書の「管理に関する事項及び計画修繕積立金に関する事項」には、「滞納金については買主の負担とする」と記載されていましたが、その金額については記載されておらず、説明もありませんでした。A氏が入居をしようとしたところ、管理会社から「まだ滞納金の60万円が支払われていない」ということを知らされたため、トラブルになりました。K社が重要事項説明を行った宅建士B氏に事情を聴いたところ、「滞納があるのは認識していたが、正確な額は調査していなかった。大した額ではないと思い、滞納金については買主の負担とする旨、重要事項説明書に記載した」とのことでした。結果的にK社はその否を認め、滞納分をA氏に支払うことになり、和解が成立しました。

ごみ置き場は移設できると聞いていたのに…

次の事例は、「買主にごみ置き場の撤去等を要求された」というものです。買主C氏は、売主業者であるF社から新築マンションの1階部分を購入しようと、費用の一部を支払いました。C氏によると、その後内覧会において、購入した物件のすぐ前が近隣の町内会の「ごみ置き場」であることを初めて知ったとのこと。C氏がF社にごみ置き場の撤去を要求したところ、F社はごみ置き場の移設は可能である回答。A氏はそれを信じて残金を支払いましたが、後日F社がごみ置き場の移設に関して町内会と交渉したところ、町内会役員の一部に反対があって移設が困難ということが分かりました。これを受けてC氏はF社に対して「ごみ置き場を移設するか、それができないときは専用庭の柵外に植栽をし、購入価格の減額をすべき」と主張し、トラブルとなりました。話合いにおいて、F社は「ごみ置き場について事前によく調査しておく必要があった。多分大丈夫だろうと思った」と非を認め、和解条件としてC氏の専用庭に植栽することと、解決金として40万円を支払うことになりました。

平柳 将人 このコラムの執筆者
平柳 将人(ヒラヤナギ マサト)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、大手資格取得の専門予備校LEC<東京リーガルマインド>で講師として働きつつ、中央大学法科大学院を卒業。現在、(株)M&Kイノベイティブ・エデュケーション代表取締役のほか、(一社)日本不動産仲裁機構の専務理事兼ADRセンター長を務める。

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