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第24回 新型コロナウィルスが引き起こす不動産トラブル事例

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人体のトラブルのみならず社会のトラブルも引き起こす新型コロナウィルス

令和3年4月時点において、未だコロナ禍収束の目途はたっておらず、国内感染者は累計で50万人超となりました。4月12日からは東京都、京都府、沖縄県にて「まん延防止等重点措置」が適用されています。私たちは、引き続き自分自身でできる最大限の対策を、地道に遂行していくことが求められているのでしょう。

コロナウィルス感染は人体にとってのトラブルであり、感染の拡大は社会的なトラブルといえます。コロナウィルス関連の損害というトラブルに見舞われている業界としては、飲食や観光などが第一に挙げられますが、不動産業界もコロナトラブルに見舞われています。今回は、コロナウィスルが引き起こした不動産に関わる人と人とのトラブルについて紹介していきたいと思います。


テナント賃料の減額請求に関するトラブル

まずは、賃貸オーナーと入居者のトラブルです。コロナ蔓延の影響で今まで通りに仕事や商売ができず、売上が落ち込んでしまったために家賃を支払うことが難しくなってしまった入居者が、賃料の減額請求をしたものの受け入れられず、トラブルになってしまったというものです。ある神奈川県の飲食店オーナーは、客数の激減や自治体からの休業要請で売上が落ちてしまったので、賃貸オーナーに「天災のようなコロナウィルスの影響で売り上げが落ちたのだから、賃料を減額するのは当然である」と主張をしたのですが、受け入れられませんでした。

しかし、この時点で厳密にはトラブルにはなりません。なぜならば、コロナウィルスの影響というような背景があったとしても、それだけで賃貸人と賃借人の契約に法律上直接の影響を与えることにはならないからです。休業要請を受けた業種が入居している場合など、各地方自治体が賃料減免の配慮要請に応じた賃貸オーナーに対して減免した賃料に対する支援などをしていますが、これもあくまで「要請」に過ぎないのです。ここでは、結果的に家賃を滞納してしまい、これがなかなか支払われないということがトラブルとなっています。

トラブル解決の話し合いでは、もともと「コロナウィルスの影響だから賃料を下げるのが当然」という姿勢で飲食店オーナーが交渉を持ちかけたことに対し、賃貸オーナーが気を悪くしてしまい、これに応じなかったということが分かり、飲食店オーナーがあらためて真摯な姿勢で辛い現状を話したところ、賃貸オーナーも理解を示し賃料の減額と滞納分の分割払いを了承することとなりました。

建設現場における工期遅延に関するトラブル

次に、マイホームを建築する施主と施工事業者間のトラブルです。千葉県の建設現場で感染者が出てしまったため、工事が延期になってしまい、期間内に工事を終えることができなくなってしまいました。そして、これが原因となって施主は仮住まいの賃貸マンションに住み続けなくてはならなくなり、余分にかさんでしまった賃料を支払って欲しいとトラブルとなったのです。

このトラブルについては、話し合いの結果、工事が終わるまで住み続けなければならないマンションの賃料を、施主が全額負担するということになりました。というのも、まだ事例が少なく確定的なことは言えませんが、コロナウィルスは「天災」として不可抗力であり、事業者に過失は認められないということになったからです。

平柳 将人 このコラムの執筆者
平柳 将人(ヒラヤナギ マサト)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、大手資格取得の専門予備校LEC<東京リーガルマインド>で講師として働きつつ、中央大学法科大学院を卒業。現在、(株)M&Kイノベイティブ・エデュケーション代表取締役のほか、(一社)日本不動産仲裁機構の専務理事兼ADRセンター長を務める。

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