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第14回 電力自由化に関するトラブル事例

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増え続ける電力切り替え件数

2016年4月に小売が自由化された一般家庭向けの電力(電力自由化)ですが、経済産業省のまとめによると、電力契約切り替え(スイッチング)率は2018年9月時点で1,284万件となっており、スイッチング率は20.5%となっていることが分かりました。

なお、スイッチリング率は今まで右肩上がりで上昇してきているため、2020年現在では、さらに上昇していることと推察されます。利用する人が増えれば、それと共に増加するのがトラブルです。特に、今まで馴染みのないしくみの利用の際には、消費者や事業者の不慣れや知識不足から発生してしまうトラブルも多くなってきます。

全ての賃貸物件で新電力が使用できるとは限らない

マイホームのみならず、賃貸住宅に住んでいても自由に使用する電気を選ぶことができるのが電力自由化のポイントの一つですが、これから賃貸住宅に住んだり、引越しをしたりするような方は、注意が必要です。トラブル事例を紹介します。

賃貸住宅の引越し先を探していたA氏は、携帯電話会社が提供する電気を使用しており、引越し先でも同じ電気を使用したいと要望を出していました。しかし、不動産会社の営業マンは電力自由化の仕組みについて理解をしていなかったため、「大手の会社の新電力であるし、CMも頻繁に見るし、どこの物件でも大丈夫だろう」と安易に考え、引越し先でも新電力を使用できるかということを考慮せずに、物件を紹介してしまったのです。内見をした結果、A氏も物件を気に入り、その日のうちに決めて、後日に契約という流れになりました。

しかし契約当日、A氏が入居する物件は、賃貸オーナーが建物全体で一括して電力会社と契約している物件であり(電気料金は賃貸オーナーに支払う)、入居者の個別契約は不可であることが分かりました。営業マンは、案内時に新電力の利用に必要となる「スマートメーター」があるかどうかも確認していなかったのです。

A氏は割引ポイント等も付与されるため、当然それまでの新電力を使用したかったのですが、引越し準備も進めてしまっていたため、仕方がなく引越し先にて新電力の利用を諦めることとなりました。

新たに賃貸住宅を契約する方は前もって確認を

賃貸住宅選びをナビゲートする不動産会社はもちろん、消費者もあらたな賃貸住宅を契約する際には、「新電力が使用できるか」を確認しておくべきだと考えられます。現状では新電力を使用していなくとも、次々と新たな新電力商品が登場している昨今、新電力への切り替えの可能性は大いにあるからです。

平柳 将人 このコラムの執筆者
平柳 将人(ヒラヤナギ マサト)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、大手資格取得の専門予備校LEC<東京リーガルマインド>で講師として働きつつ、中央大学法科大学院を卒業。現在、(株)M&Kイノベイティブ・エデュケーション代表取締役のほか、(一社)日本不動産仲裁機構の専務理事兼ADRセンター長を務める。

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