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第3回 離婚と住宅ローンに関するトラブル事例

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せっかく購入したマイホームが足かせに…

マイホームに関するトラブルとしては、離婚と住宅ローンに関するものも決して少なくありません。例えば、夫婦共働きの世帯が共有名義で住宅ローンを組んで家を購入したが、その後離婚をしてしまうという結末を迎えた場合です。

このようなケースでのスムーズな解決策は①住宅ローンを繰り上げて返済してどちらか一方の単独名義にする②家を売却するといった方法がありますが、実際には繰り上げ返済をするだけの貯蓄がない、または売却してもオーバーローンとなってしまうなど、ハードルの高い解決策になります。

したがって、夫婦できちんと持ち家に関する取り決めを行い、折り合いをつけるという解決策をとる方が大半といえます。ところが、既に両者間の関係性がこじれてしまっているため、コミュニケーションがうまくとれない、もしくはとりたくないという場合があります。

なお、離婚と住宅ローンの問題が発生した際には、「できるだけ離婚協議中に解決する」ということが大切です。面倒な問題であるが故に先送りをしてしまい、離婚が成立してもローン名義がそのままであると、「相手の協力が得られにくい」という状況になってしまうからです。これは時間が経てば経つほど解決は困難になっていきます。

離婚と住宅ローンに関するトラブル解決方法事例

離婚と住宅ローンに関するトラブル解決方法事例を次に紹介します。

①所有権が夫婦共有で、ローンも夫婦の連帯債務であったため、了承した夫一人に所有権とローンを一本化した

②所有権が夫単独でローンも夫単独だが、妻が連帯保証人となっていたケースでは、妻の保証を解除する為、夫単独で他の金融機関に借り換えを行った

③所有権が夫単独でローンも夫単独であったが、妻に「そのまま住み続けたい」という意向があったため、妻が不動産を買い取るローンを組んだ

離婚と住宅ローンに関するトラブル解決にはあらためて住宅ローンを活用するのが有効なケースが多いですが、置かれた状況や「これからどうしたいのか」がまさに人それぞれであるため、ここではぜひとも住宅ローンの専門家の力を借りるのが良いでしょう。

例えば元妻が家を引き取り、住み続けてローンを返済していくというケースであれば、月の各種ローン返済額18万円を一本化して10万円にまで抑えたり、返済期間20年を30年にすることで月々の返済額を圧縮することができたといった事例もあります。

当事者間の合意形成を手助けするADR

トラブル解決に向けて欠かせないのが夫と妻の合意形成です。これからマイホームをどのように取り扱っていくのか。しっかりと互いの意見を述べ合い、着地点を探していかなければなりません。

しかし、先にも書きましたが、やはり離婚という結果を選んだ両者の関係は決して円滑なものばかりではなく、どうしても「感情的になって話合いが進まない」「互いの主張を一歩も譲らない」などの問題が起こりがちです。

このような場合で活用できるのが、話合いによるトラブル解決手法であるADRです。法務大臣認証ADR機関である(一社)日本不動産仲裁機構(以下、仲裁機構)の実施するADRにおいては、公平公正な第三者として当事者間に入る調停人を住宅ローンの専門家から選任することができます。

当事者間の関係性がこじれていても、調停人が居れば話合いは進んでいきますし、住宅ローンの専門家が調停人になれば、住宅ローンを活用した解決方法もアドバイスしてもらうことができます。

当事者同士顔を合わせたくない場合に適した「別席調停」「電話調停」

また、仲裁機構の実施するADRでは「別席調停」や「電話調停」という形で話合いを進めていくこともできます。

別席調停は、調停人が当事者を交互に任意の場所に呼び、要望等を聞きながら話合いを進めていくというものです。電話調停ではこれを電話等にて行います。この方式でしたら、当事者が顔を合わせる必要はありません。

離婚と住宅ローンのトラブルを抱えている方は、ぜひ「未来に向かって進んでいこう」という意識を持ち、前向きにトラブル解決に取り組んでいただければと思います。

次回は、マイホーム売買に関するトラブル事例を紹介します。

平柳 将人 このコラムの執筆者
平柳 将人(ヒラヤナギ マサト)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、大手資格取得の専門予備校LEC<東京リーガルマインド>で講師として働きつつ、中央大学法科大学院を卒業。現在、(株)M&Kイノベイティブ・エデュケーション代表取締役のほか、(一社)日本不動産仲裁機構の専務理事兼ADRセンター長を務める。

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