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第19回 ハウスメーカーの資金計画と見積もりの特徴

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築業界では、契約行為2回を経て着工に進みます。

大まかですが、代表的な流れは「資金計画表」を作成して、家づくりの全体的な資金計画を把握します。次にプランを作成、数回の打ち合わせを経て、そのプランの「概算見積もり」にて、建築工事の費用を確認し、1回目の契約を締結します。

その後、複数回の打ち合わせのあと、プランを確定させ「最終見積もり」となり、ここで2回目の契約の後に着工していくことになります。

今回のコラムでは、「資金計画表」・「概算見積もり」・「最終見積もり」が、どんなものか?問題が発生しやすいことはなにか?を過去の事例から解説していきます。

A3(もしくはA4)の資金計画表とは?その注意点は?

ハウスメーカーだけでなく工務店などでも、最初に作成するのは資金計画表です。


このような形式で、全体計画を把握するケースが多いと思います。

主な内容としては、建築工事にかかわる金額・付帯工事費用・諸費用などが明記され、住宅ローンを組む場合に(と言っても、ほとんどがそうだと思いますが)、返済計画などが理解できるようになっています。今後のスケジュールなども一目でわかるようになっていますね。

次のようなA4提案書ですと、情報量が少なく若干不安を感じます。

ハウスメーカーの資金計画は、「頭金」と「年収からの借入金額」で計算していきますので、『その返済額が問題なければ大丈夫でしょう?』というロジックですね。

近年では、家賃を払うのであればその賃料分のローンを組み、最終的には資産として家が残る方がいい!という考え方が浸透していることもありますから(実際にはFPによるきちんとした診断が必要なのは言うまでもありませんが)、営業マンも御多分にもれず、そのようなトークで折衝が進んでいきます。

不思議なことに、この後ハウスメーカーから最初に提出される見積もり金額は、およそこの「資金計画表」の建築費用前後のものが提出されます。

つまり建築費予算が3500万であれば、3500万前後の見積もり。4000万であれば4000万の見積もり、と言うことですね。

あまりに坪単価が合わないケースでは、見積もりを出すだけは出すか・・みたいなかけ離れたものが出てきますが、基本的には頑張って見積もり金額を合わせてきます。合わせるのは「坪単価から考えた述べ床面積」でプランを計画する事になります。

つまり坪90万、予算3500万ならば、3500÷90=38坪のボリュームで計画する事になります。でなければ検討のテーブルにさえ乗りませんから。

本来必要な間取、不要なボリュームというようなことではなく、まずは金額のみでプラン立案をする営業もいますので注意が必要ですね。

概算見積もりの「概算」は、どんな意味なのか?

辞書によると「概算」とは、大まかに計算したり勘定することとなっています。

微妙なニュアンスですね(笑)。メーカー側の言い分としては、『まだ詳細が決まっていないから、正式な金額は出せないけど、だいたいこんなもんですよ。』ということでしょう。

しかしながら、その後に、概算金額が一気に増加し、実際には考えていた費用ではとても建てられない・・ということもありますから注意が必要です。

概算見積もりで特に注意が必要なのは「一式計上」と「預り金」です。

金額は一般的に「材料費」と「労務費」で計上されますが、これらを一緒くたに計上することを一式計上と言います。

預り金は、どの程度かかるか正確な費用が把握できていないが、経験則などから「こんなもんだろう」という計上の方法です。

どちらも正確な金額が理解しづらいので、このような項目は少ないほうがよいのは当然ですね。

次の見積もりは住友林業のものですが、本体工事はほぼ一式計上という特徴があります。内容が非常にわかりづらく不親切な印象が否めません。

また、見積もり形式によっては見やすい・見にくいものがあります。「理解しにくいもの」と言ったほうがいいでしょうか。

特に、部屋ごとに詳細が計上されているか?は見やすさに影響します。

次の見積もりはヘーベルハウスのものですが、見積もりは部屋ごとに計上されているため見やすのが特徴です。(一式計上なので差額計算などは手間取りますが‥)

積水ハウスの見積もりでは、1棟分まとまった計上なので、リビングの床だけ変えると・・といった場合には差額がぱっとでませんので、とてもわかりづらいですね。


最終見積もりで上がってしまう傾向がある項目は?

よくあるケースでは、その現場に関する別途費用です。

◆敷地と道路が高低差のある場合、標準外の工事が発生してしまう
◆敷地分割によって前面道路からの水道本管取り出しが発生してしまう
◆特注の建具や家具を造作発注する
などです。

いわゆる別途工事や、付帯工事といったものが、予想外の増加傾向にあると思います。
大きな理由としては、この項目はハウスメーカーの営業マンでは、経験則では掴みづらいという事です。

いつも同じような見積もりで完了すればいいのですが、それ以外のものにはめっぽう弱いという営業もいますので注意が必要です。

市村崇 このコラムの執筆者
市村崇(イチムラタカシ)
一級建築士・ホームインスペクター。大手HMの現場監督を経て2007年に設計事務所・工務店を設立、10年間で500棟以上の施工管理を行う。2013年に(社)住まいと土地の総合相談センター副代表に就任。建築トラブルを抱える多くのクライアントの相談に乗る傍ら「絶対に後悔しないハウスメーカー&工務店選び 22社」など多くの本を企画、執筆している。

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