第7回 売る側が使う心理テクニック:その2:ダブルバインド

前回は「イエスセット」について、販売員が顧客との信頼関係を築くテクニックについてご紹介しました。第七回は「売る側が使う心理テクニック:その2:ダブルバインド」です。
本来は二重拘束、という意味であり、1つの大きな提案を断ると、小さな提案に対して選択しやすくなる、という心理テクニックのことです。例えば、
・5000万円の家を紹介された後に、4000万円の家を紹介されると大変お安く感じてしまいます。
・400万円のシステムキッチンの横に一部素材が異なるだけで機能やデザインは同じような300万円のシステムキッチンがあれば、そちらを選びたくなります。
1つ目に高額な商品を提案された後に、高額なものと比較したら安く感じる商品を提案されると“安い”と感じてしまうのです。そうした販売員のテクニックをダブルバインドと呼びます。
以前にマジックナンバーについて、ご紹介したコラムがありましたが、その際には3つ掲示して、真ん中を選ばせるテクニックでした。今回は2つを掲示し、どちらかを選ばせるテクニックともいえるでしょう。

このテクニックはしばしばコマーシャルでも利用されています。
例えば、
・赤いきつねと緑のたぬき
・きのこの山とたけのこの里
2つの選択の中にラーメンやポッキーといった他社商品が介在せず、思わず脳裏に焼き付きます。スーパーに行ったらなんとなく赤いきつねと緑のたぬきが目に入るようになっています。ダブルバインドは2つ選択肢から選ばせるだけではなく、その効力は「他の選択肢をなくす」という点にあるのです。
一方で、日常生活においても、以下のようなシーンはありませんか?
・ご家族でお子さんと一緒にお出かけする際に
「さあ、お出かけしよう!山がいい?海がいい?」
・外食する際に
「いつものファミレスじゃなくて、焼肉がいい?イタリアンがいい?」
会話の中ですでに選択が限られていますね。
しかし、こうしたシーンがあったとしても、ふと考える時間があれば、
「最近行ってないから動物園にしない?」
「美味しいお蕎麦が食べたいな」
と返答できます。
多くのご家庭ではきっと考える時間を持って返事をしているに違いありません。しかし、販売員の上手な説明の中では判断が鈍ってしまうのです。聞きますからね~。」
あなた「そうなんです、動画の見すぎじゃないかと思っています。」
販売員はまずはあなたの予算を探るように少し高額な商品を最初に提案してくることでしょう。優秀な販売員であれば、何回かのやり取りやしぐさ、服装などでこれくらいの価格帯の家をお求めかな、と予想を立てているに違いありません。前回ご紹介したイエスセットとダブルバインドを駆使してあなたの情報を収集しています。

山本広高(ヤマモトヒロタカ)
株式会社THINCESS代表取締役。JIMC日本統合医療センター、四ツ谷なかよし鍼灸院を経営。様々な業種における販売支援、新事業立ち上げ支援を行う現場重視のコンサルタント。
コラムバックナンバー
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