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第16回 売る側が使う心理テクニック:その11:プロスペクト理論

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ンサルタントの山本広高です。
前回は「テンション・リダクション効果」と呼ばれる、何か大きな決断の後にふと緊張が解けて注意力が散漫になりがちな心理についてご紹介しました。

第十六回は「売る側が使う心理テクニック:その11:プロスペクト理論」です。

行動経済学という分野の学問があります。心理学の中でも比較的新しいもので、1979年に、心理学者であり行動経済学者のダニエル・カーネマン(Daniel Kahneman)氏と、心理学者のエイモス・トヴェルスキー(Amos Tversky)氏によって提唱されたものです。

経済学といえばお金の流れや経済現象をひも解く学問です。しかし古典的な経済学では現在の経済状況を説明することはできても、変化を促すアプローチに効き目がなくなっています。以前は日銀が金利(公定歩合:金融機関への貸出金利)を上下させることで経済のコントロールを行ってきましたが、マイナス金利にしてもインフレは起きていません。

そこで注目されてきているのが、なぜ個人はその時その行動、経済活動をしたのかを分析するという分野です。人はいつでも合理的に行動しているわけではありません。非合理的に購買行動をしてしまうことが多々あります。こうした行動を心理学に基づいて研究されてきたのが行動経済学です。

行動経済学の中でも有名なのがプロスペクト理論と呼ばれるものです。一言でいうと、人は得をするよりも損をしたくない選択を取りやすい、というものです。

80%の確率で4万円もらえるくじ
100%の確率で3万円もらえるくじ

あなたはどちらを選びますか?
人は100%もらえる方を選びがちです。
いわゆる期待値と呼ばれる数値計算上は80%のくじを選ぶのが合理的にもかかわらず、です。※Aの場合、80%×4万円で期待値は32000円です。Bは100%掛ける3万円のため、期待値は30000円となります。

非合理的な判断をしがちなのは、住宅購入の場合は金額の大きさです。プロスペクト理論においては、金額が上がると損得の感覚は小さくなることが知られています。

通常スーパーで野菜を購入する場合にA店では300円のものが、B店では280円だからB店で購入する、という判断をしている方が多いと思います。ても、X社の照明は15000円、Y社の照明は18000円だけど、少し明るさが違う、リモコンで明るさ調整が1段階多い、だからY社を選ぶ。3000円くらいの差だからいいだろう、こんな判断をしていませんか?

家という高額な買い物の場合、差額の3000円は微々たるものに感じてちょっとずつ高額なものを選びがちです。もしかしたら近くの家電量販店で購入しても十分に良いものがあるとしても、工務店のおススメされるままに購入してしまう、こんなことも起こりがちです。営業担当者に言われるがまま、ステップを追うように購入をしてしまいます。

早まった判断をしないために必要なのは時間です。

少し考える余裕をもって何かを決断する必要があります。もちろん、決断を遅らせることで購入できないこともあるかもしれません。でもそれも縁です。高額な商品ほど、余裕をもって購入を決断したいところです。

次回は
「売る側が使う心理テクニック:その12:ハーティング効果」
です。ご期待下さい。

山本広高 このコラムの執筆者
山本広高(ヤマモトヒロタカ)
株式会社THINCESS代表取締役。JIMC日本統合医療センター四ツ谷なかよし鍼灸院を経営。様々な業種における販売支援、新事業立ち上げ支援を行う現場重視のコンサルタント。

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