第32回 民法が改正されましたが、知っていますか?

今回のコラムで、いったんコラム寄稿がお休みとなります。今後は、新しい企画ですが「ハウスメーカーレビュー(仮)」と称し、実際に建築中のインスペクションを解説するコーナーや工務店へのインタビュー企画などへの参画を予定していますので、そちらでもよろしくお付き合いください。
さて、今回の記事は「民法改正」に関して。この度、民法が改正され建築業界でも大きくルールが変わろうとしています。耳にされた方・初めて聞かれた方、様々かと思いますが、知っておくべき改正点や注意点をお伝えします。
◆なぜ法律が変わったのか?
これまで欠陥住宅かどうかは、その住宅に瑕疵があるか?ないか?で判別されてきました。瑕疵とは簡単に言えば、一般的に備わっているはずの機能や品質がないことを指すのですが、これが一般の方にはわかりづらい為に「瑕疵判定に多くの時間や労力、金銭」がかかってきました。
建築紛争案件は医療事故案件に次ぐほど、時間が長くかかりますから一般の方の心身疲弊と金銭負担は相当になります。その為、瑕疵があるか?ないか?ではなく、一般の方でもわかりやすくしようよ!という流れがあり民法改正に至ったのが一つの理由です。
◆何が変わったのか?
今回の改正で「瑕疵」という言葉が「契約不適合」に変わりました。本来備えているべき性能や機能・・ではなく、当事者同士が約束した内容(契約)に合致しているかどうか?が重要だよね、ということです。そうすれば、一般の方にもわかりやすいということですね。
◆他に変わった点は?
他に変わった点ですが、契約解除ができる。ということです。約束したものでないならば「いらない」と言っていいよ、ということですね。基本的には、瑕疵があった場合には「直してください」・「差額費用を払ってください」・「損害を賠償してください」などがこれまで主張できる内容でしたが、改正法では「直せないのであれば契約解除、つまりそんなものいらないから契約自体解除だよ」ということがありになる流れです。
★民法改正の説明をうける
担当する営業に、改正法については必ず、問合せしましょう。何が変わったのか?それによりどうなったのか?を説明してもらう必要があります。場合によっては、説明ができない営業マンもいますから、そういった場合には契約要注意ですね。考えられるひどい説明は、「改正法に対応した契約書になっていますから、大丈夫ですよ(ニコ)」なんていうのは最悪かと思います。
★何を約束したのか?を明確にする
「契約に適合しているかどうか」ですから、重要なのは「何を約束(契約)したか?」になります。業界では、一般的には契約行為を2度します。最初の契約を実施した後に、打合せを複数回行い、改めて契約を締結します。ここで注意すべきは、どの図面が最終図面か?です。最終図面=約束ですから、最終的な約束はなにか?を忘れずにしてください。
★約束違反の程度はどのくらいか?すり合わせをする
確認しておくことが重要なのは、もう一つあります。それは、契約不適合の程度です。なんでもかんでも「約束と違う」ということで、契約不適合を主張できることではありません。その程度は各社で判断が様々なようです。例えば、「こういった場合はどうなのか?」をあらかじめ確認・すり合わせしておく必要があるのはわかるかと思います。
★時期やタイミングを確認しておく
契約不適合を主張できるには条件があります。その一つが、時効ですね。この主張タイミングを契約書(約款)で各社明記してありますので、その部分を必ず説明を受けて理解しておく必要があります。
最後になりますが、契約はあくまでも「双方に権利義務が発生する」ことを忘れないでください。よく、「仮契約ですから、後で何とでもなりますよ?」みたいな売り方をする営業マンも見かけますが、仮の契約なんて存在しません。契約は契約、印鑑を押したら施主側にも義務が発生することを理解して契約書に調印してくださいね。多くのトラブルは、当然のことですが、契約以後に発生しますから・・・
それでは皆様にとって失敗のない家づくりを祈念しています。

市村崇(イチムラタカシ)
一級建築士・ホームインスペクター。大手HMの現場監督を経て2007年に設計事務所・工務店を設立、10年間で500棟以上の施工管理を行う。2013年に(社)住まいと土地の総合相談センター副代表に就任。建築トラブルを抱える多くのクライアントの相談に乗る傍ら「絶対に後悔しないハウスメーカー&工務店選び 22社」など多くの本を企画、執筆している。
コラムバックナンバー
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