第30回 断熱性に関する基本知識 その2

前回、多くのハウスメーカーでは充填系の断熱材が仕様採択されているとお伝えしました。理由としてはコスト、工期、作業効率を考慮したうえで・・と説明しましたが、少し説明を追加します。

充填系を採用するとコスト、工期、作業効率が有利になるのはなぜか?ですが、材料単価が安いのは当然として、多くのハウスメーカーでは「断熱工事を大工が担当している」ことが、理由に挙げられます。
一般的に工事は専門職種に分けられており、断熱工事も断熱業者が施工する事も考えられますが、職種が複数にまたぐとそれだけ工期が延びます(正確に言えば工程管理が難しくなりバッファー(予備日)を取らざるを得なくなります)。
大工工事が始まってから途中で断熱業者を投入するよりも、そのまま大工が断熱工事をしたほうが工事進捗はスムーズですし、結果として断熱施工の労務単価を大工にまとめて発注できますから、コストを抑える交渉が可能ということですね。特別な道具を使うこともありませんから、それが可能ということです。
しかしながら、断熱工事の基本を正しく理解していない大工が「断熱工事」を実施する場合には、指摘が多くなるという当たり前の現象が起きてしまいます。皆さんでもある程度できる断熱工事のチェックポイントを伝授します。
断熱工事の基本として、原理原則の2項目が挙げられます。
① 断熱材を隙間なく充填すること
② 防湿層を連続させること
上記が重要であり、指摘が多いのも事実です。
断熱材メーカーの大手、ニチアスHPにも下記の説明があります。
※ニチアス社HPより引用
隙間がないように施工をしないとせっかくの断熱材も「壁」で考えれば断熱性能は著しく低下してしまいます。
特にコンセントBOX周りなどは隙間が発生しやすいので要注意ですね。
また、特に充填系の断熱材は湿気に弱いですから、防湿層を連続させることが重要です。
※旭ファイバーグラス社HPより引用
現場で断熱工事が完了したら、上記の項目がきちんと施工できているかどうか確認することをお勧めします。

市村崇(イチムラタカシ)
一級建築士・ホームインスペクター。大手HMの現場監督を経て2007年に設計事務所・工務店を設立、10年間で500棟以上の施工管理を行う。2013年に(社)住まいと土地の総合相談センター副代表に就任。建築トラブルを抱える多くのクライアントの相談に乗る傍ら「絶対に後悔しないハウスメーカー&工務店選び 22社」など多くの本を企画、執筆している。
コラムバックナンバー
- 第32回 民法が改正されましたが、知っていますか?
- 第31回 業界における、コロナウイルス(COVID-19)の影響
- 第30回 断熱性に関する基本知識 その2
- 第29回 断熱性に関する基本知識 その1
- 第28回 耐震性に関する基本知識 その3
- 第27回 耐震性に関する基本知識 その2
- 第26回 耐震性に関する基本知識 その1
- 第25回 比較コラム「屋根の形状について」
- 第24回 比較コラム 「外壁仕上げ モルタルVSタイルVSサイディング」
- 第23回 比較コラム「省エネVSパッシブ!?」
- 第22回 比較コラム「エアコンVS全館空調」
- 第21回 ハウスメーカーのインスペクション事例に基づく木造・鉄骨造のメリット・デメリット
- 第20回 これまでのインスペクションに基づく「ハウスメーカーと工務店の違い」について
- 第19回 ハウスメーカーの資金計画と見積もりの特徴
- 第18回 ハウスメーカー評価のまとめ アフターメンテナス編
- 第17回 ハウスメーカー評価のまとめ 施工力編
- 第16回 ハウスメーカー評価のまとめ 設計自由度編
- 第15回 ハウスメーカー評価のまとめ 耐火・耐久性能編
- 第14回 ハウスメーカー評価のまとめ 断熱・気密性能編
- 第13回 ハウスメーカー評価のまとめ 耐震性能編
- 第12回 ミサワホーム株式会社の評価
- 第11回 積水化学工業株式会社(セキスイハイム)の評価
- 第10回 株式会社一条工務店の評価
- 第9回 住友不動産株式会社の評価
- 第8回 三井ホーム株式会社の評価
- 第7回 積水ハウス株式会社(シャーウッド)の評価
- 第6回 住友林業株式会社の評価
- 第5回 パナソニックホームズ株式会社の評価
- 第4回 旭化成ホームズ株式会社の評価
- 第3回 大和ハウス工業株式会社の評価
- 第2回 積水ハウス株式会社の評価
- 第1回 プロローグ&自己紹介