第17回 売る側が使う心理テクニック:その12:ハーティング効果

前回は「プロスペクト理論」と呼ばれる、人は非合理的に購買行動をしてしまう心理についてご紹介しました。
第十七回は「売る側が使う心理テクニック:その12:ハーティング効果」です。ハーティング効果とは、皆がいいと言うような大勢が選択した方を自分も選択してしまう心理効果のことです。
マンションや戸建ての販売においても実は同じような効果を出すシーンがあります。新築マンションや戸建てのチラシを見ると、第〇期募集、というような文言を見たことがあると思います。気づくとすでに二期、三期でもうほとんど埋まっているような印象です。いざ展示場に行くと、すでに購買確定の箇所にはバラの造花が画鋲で止められていたりします。
もちろん、多くの申込みや見学者が殺到して販売員が対応しきれなくなるリスクを回避することが一番の狙いではあるのでしょう。販売管理費を削減するためにマンションの販売はそれほど多くの販売員を置いていられません。一人が対応できる顧客の数も限度がありますので、やはり販売時期をずらすというのは理にかなっています。
しかし、結果的に購買確定の箇所が多いシーンを見た顧客はどう感じるでしょうか?
言わずもがな、「人気の物件だ!早く契約しなきゃ!」という心理を誘うに違いありません。おそらく一期でも二期でも価格やサービス、値引きについて差はないと思われます。しかし、少し人気が出た物件は加速度的に販売が進むというのも事実です。
この心理効果は飲食店が得意としているところです。新規オープン直後は大々的にチラシなどの広告を打ってキャンペーンを開催します。必然的にお得なため客は行列を作る傾向にあります。しかし、半年経ってからが勝負です。次第に初期効果は薄れるため、リピーターを育てることができたお店が生き延びて成長することができます。
やはり本質的に大事なのは商品力です。一部の方々は商品の価値を評価する前に行列を見て吸い込まれるように購入を決断するかもしれませんが、多くの人は少し冷静に商品を見て他と比較することができると考えられます。行列を見たらプロスペクト理論を思いだしてください。
次回は
「売る側が使う心理テクニック:その13:双曲割引」
です。ご期待下さい。

山本広高(ヤマモトヒロタカ)
株式会社THINCESS代表取締役。JIMC日本統合医療センター、四ツ谷なかよし鍼灸院を経営。様々な業種における販売支援、新事業立ち上げ支援を行う現場重視のコンサルタント。
コラムバックナンバー
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- 第18回 売る側が使う心理テクニック:その13:双曲割引
- 第17回 売る側が使う心理テクニック:その12:ハーティング効果
- 第16回 売る側が使う心理テクニック:その11:プロスペクト理論
- 第15回 売る側が使う心理テクニック:その10:テンション・リダクション効果
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