第17回 コロナ禍の不動産トラブル事例

コロナ禍によって家賃保証サービス会社が倒産
2020年7月16日、家賃保証サービス会社では初の新型コロナウィルス関連倒産が発生しました。家賃滞納が増加してしまい、保証債務の履行が増加してしまったことによるものです。
不動産業界ではショッキングなニュースであり、当然、他の保証会社においてもコロナ禍によって保証債務の履行の増加が生じていると考えられ、同様の倒産の可能性も危惧されます。もちろん、賃貸管理会社や賃貸オーナー、入居者は、この動向を注視する必要性があるでしょう。
コロナ禍によって引き起こされる不動産トラブル
新型コロナウィルスに関するトラブルとしては、「特別給付金を振り込むから口座を教えて欲しい」といった詐欺被害や、結婚式場のキャンセル料をめぐるトラブル等がありますが、当然、不動産に関するトラブルも発生しています。
例えば、引越しに関するトラブルがあります。予定日に引越し事業者がイレギュラーな営業形態になってしまい、退去ができず、留まった日数分の賃料が発生してしまったというものです。また、コロナ禍によって収入が激減してしまい、家賃が支払えなくなってしまった事例や、テナントが家主に家賃減額を要求したが、交渉がなかなかまとまらず、両者間でトラブルとなってしまった事例もあります。
入居者同士のトラブルも発生
入居者同士のトラブルも発生しており、その中でも「騒音や生活音」に関するものがコロナ禍の影響としては特徴的です。自粛期間やテレワークによって外出する機会が少なくなり、自宅にいる時間が長くなったため、コロナ以前は気が付かなかったような隣人の生活音が気になってしまうのです。特に、テレワークをしている人が静かに集中していたいにも関わらず、休校中で家にいる隣家の児童の騒ぐ音が耐えられない、という内容が多くなっています。
「ウィズコロナ」の考え方により、多くの人は以前よりも家にいる時間が長くなり、テレワークを継続している人も多いことでしょう。したがって、このような騒音トラブルはまだまだ発生する可能性があると考えられます。
騒音に関するトラブル解決事例
賃貸マンションの上の階の住人A氏の騒音が気になるというB氏。B氏は騒音問題を解決したいと思い、この物件を仲介してくれた不動産会社C社(調停人候補者在籍)に「A氏に音を出すのをやめさせて欲しい」と相談に訪れました。C社によると、A氏の両隣の住人からは苦情は出ていませんでした。ここで、C社は物件オーナーに連絡をとり、トラブル内容を説明し、解決のための取り組みをすることに理解をもらいました。
そして、C社はB氏に「初期費用をディスカウントするから、別の部屋に移ること」を提案。別の部屋に引っ越しをしたB氏は、それ以降騒音問題を訴えることはなくなり、トラブルは解決しました。トラブル解決のポイントは、騒音の原因を突き止めてやめさせることではなく、対話と柔軟な発想にあったのです。

平柳 将人(ヒラヤナギ マサト)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、大手資格取得の専門予備校LEC<東京リーガルマインド>で講師として働きつつ、中央大学法科大学院を卒業。現在、(株)M&Kイノベイティブ・エデュケーション代表取締役のほか、(一社)日本不動産仲裁機構の専務理事兼ADRセンター長を務める。
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