第12回 売る側が使う心理テクニック:その7:アンカリング

コンサルタントの山本広高です。
前回は「バンドワゴン効果」と呼ばれるみんながいいというものを欲しくなる心理についてご紹介しました。
第十二回は「売る側が使う心理テクニック:その7:アンカリング」です。です。
テレビの商品紹介番組において、「39800円が今なら19800円!」というような、価格が二段構成になっているようなことがあると思います。実はこの39800円という値付けによって、19800円は際立ってお得感が出ます。
この時の心理状態をアンカリング効果と呼びます。
最初、もしくは同時に2つの価格や商品の特徴を見ると、頭の中に強い印象を残してしまい、購買における判断行動にバイアス(偏見)を与える効果のことです。
モノを買う時、どうしても最初に入ってきた情報に意識は引っ張られる傾向があります。アンカリングの語源はまさに「船のアンカー(錨)」と言われており、頭の中に情報という錨を置くことから名づけられたと考えられます。
最初に掲示された金額は誰もが思わず、「いい立地、いい環境、いい材料で作られているから“高い”のは当然だよね」という印象を持つような設定がされていることでしょう。
しかし、当然のことながら、一般的には営業担当者の値引き幅が設定されており、そこまでは値引きしてもらうことは可能です。直接的な値引きでなくても、グレードを変更して同じ価格にするといった“お得感”を感じさせるシーンがしばしば見られます。
重要なのは“値引き”の出し時です。
住宅購入のために展示場や営業担当者と話しているときは心躍る状況であっても、ふと冷静になると高い買い物だし、どうしようかな、という考えがよぎります。いわゆる迷っている心境において、すかさず値引きの提案をされたら思わず契約してしまうに違いありません。
営業担当者が見積を作るのに、1週間かかります、でも頑張ります!と言って実際には3日で持ってきてくれたらどう感じるでしょうか。仕事できる人だなぁ、私たちのために頑張ってくれた!そんな印象を与えませんか。1週間というアンカリングによって、3日という結果がとても好印象を与える現象です。
私はこれを「期待値コントロール」とも呼んでいます。
どんな商売であっても、お客さんの期待値を高く設定しすぎない。少し低めに設定しておいて、結果を少し高く評価してもらえるようにアウトプットする。クレームも少なくなりますし、お互い満足度も上がります。
モノの販売は意識する、しないに関わらず、常にこうした心理の空中戦の中で繰り広げられています。読者の皆様が少し、こうした心理について意識できるようになれば幸いです。
次回は「売る側が使う心理テクニック:その8:ハロー効果」です。ご期待下さい。

山本広高(ヤマモトヒロタカ)
株式会社THINCESS代表取締役。JIMC日本統合医療センター、四ツ谷なかよし鍼灸院を経営。様々な業種における販売支援、新事業立ち上げ支援を行う現場重視のコンサルタント。
コラムバックナンバー
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