断熱性について②:基準について

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クロセの記事を読むのが初めての方は、まずこちらの記事をお読みください。

 

ども、クロセです。
前回の記事ではUA値とQ値というものが何を示すのか、それらにどういった違いがあるのかということについて述べてみました。

どちらも断熱性を示す値であり、値が低いほど熱が通りにくい(=断熱性が高い)ということを説明しましたが、これだけでは高性能の基準がわかりませんね。

というわけで、今回は断熱性の基準に関するお話をしていきたいと思います。

しつこく注意しますが、これらの値は決して快適性や光熱費の低減を保証するものではありません。

しかしながら「偽物」の高高住宅をつかまされないためには役に立つと思いますので、何となくでも頭に入れておくことを推奨します。

省エネ基準地域区分について

基準を学ぶ前に、まず「省エネ基準地域区分」についてお話しておきます。

ざっくり言えば、地域ごとの気候に合わせて基準を分けるというものです。

例えば北海道と沖縄が同じ性能の家だとして、同じような冷暖房で同じように過ごせると思いますか?
多分そうならないと何となくわかりますよね。

そういった差異を考慮して地域ごとに基準を分けています。

基準は以下の図のように8段階に分かれています。



一般的に1地域(北海道)に近いほど1年間に消費する冷暖房のエネルギが大きく、8地域(沖縄)に近いほど小さくなります。
このことから、夏より冬のほうがエネルギを使うことがわかりますね。

まあここでは細かいことは抜きにして、地域ごとに基準が違うということを覚えておいてください。

断熱性の基準

断熱等性能等級

こちらは国が定めた基準で、省略して「断熱等級」と呼ばれたりもします。

等級は1~4まであり、等級4が本基準において最高の性能になります。
多くのハウスメーカでは「断熱等性能等級4」「ZEH相当」を満たしていることを断熱性の高さとしてアピールされている印象です。
(ZEHについてはこの後に説明します。)

基準は地域ごとにUA値が定められており、具体的には以下のようになっています。
 
地域区分 1,2 3 4 5,6 7 8
UA値
(断熱等級4)
0.46 0.56 0.75 0.87 0.87 基準なし
なんと沖縄には基準がありません。
ちなみに他の基準においても沖縄は基準がなしとなっています。

これらにかかわる制度として「長期優良住宅」「フラット35」が存在します。
制度に関する詳細は説明しませんが、これらの制度を利用するには断熱等性能等級4が必要ということを覚えておいてください。

また、2021年4月から「省エネ性能説明義務制度」というものが始まっており、断熱等性能等級4を満たしていない場合は、満たすための変更を業者側が説明する義務があります。
この制度は断熱性と深くかかわる制度のため、別記事でも説明したいと思っています。

「断熱等性能等級4」は平成11年に定められた基準を平成25年に改定したものですが、平成11年の基準から計算方法や地域区分の改定があった程度で、断熱性能の基準自体は平成11年からほとんど変わってません。

平成11年から現在(令和3年)に至る20年の間に建材は進化し、断熱性が高い家を建てることが容易になっていますが、それでも基準は変わっていないのです。

そのため、現在において断熱等性能等級4は、よほどローコストの業者でない限りはほぼ間違いなく満たせている基準であり、最高等級というよりは最低限満たせておきたい性能という感覚です。
(あくまで私個人の感覚ですが)

ZEH

ZEHとは「ネット・ゼロ・エネルギ・ハウス(おおよそゼロエネルギの意味)」を省略した名称です。
ネットはどこ行ったという突っ込みはなしで。
(;´∀`)

以下は国土交通省公式ページに貼付されているイメージ図です。

断熱性能大幅な向上、高効率な設備の導入によって省エネルギと快適な住環境を目指し、併せて再生可能エネルギ(太陽光発電)の導入によって年間のエネルギ収支ゼロを目指した住宅を指します。

ZEHにはいくつかの条件があり、満たすことで国から抽選で補助金をもらうことが可能です。
もらえる額は年ごとに変わりますし、業者によって対応ができない場合もありますので、申請する場合は各業者に確認をしてみてください。

上記の説明からわかる通りZEHとは正確に言うと断熱性能の基準ではありません。

しかし、ZEHには必要な外皮性能(UA値)も定められており、その値を満たしているかどうかが断熱性能の基準として使われることがあります。

ハウスメーカの広告でも「標準でZEHレベル」といった感じでアピールする会社もいるかと思います。

例えば、断熱性能を売りにしている一条工務店というメーカは、以下のような広告を掲載しています。家は性能。こだわりの家づくりなら一条工務店|住宅メーカー(ハウスメーカー)

ちなみに超ZEHという言葉は一条工務店が勝手に自称しているだけで、正式には存在しません笑

さて、この断熱性能の基準ですが、断熱等性能等級と同じく、以下のように地域ごとで設定されています。
地域区分 1,2 3 4 5,6 7 8
UA値
(ZEH相当)
0.4 0.5 0.6 0.6 0.6 基準なし
沖縄は基準なしとなっていますが、これは沖縄ではZEHに対応していないという意味ではなく、満たすべき断熱性能が定められていないということでしょう。

先ほどの断熱等性能等級4と比較すると、UA値が低く(断熱性能が高く)設定されており、より高レベルな断熱性能が求められていることがわかります。

快適性の面でも断熱等性能等級4と比較すると向上しており、設計がしっかりしていれば真夏でも真冬でも十分快適に過ごせるようです。

正式にZEHの認定をとって補助金をもらうためには断熱性能以外にも高効率設備やソーラーパネルの導入が必要ですが、ZEHレベルの断熱性能を満たすだけであれば、窓の性能が向上したこともあり、そこまでお金を掛けずにできるようになりました。

これから新築を建てるなら、少なくともこのレベルは満たしておきたいというのが私個人の感覚です。

HEAT20

HEAT20とは「20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会」という民間で設立された会であり、より高度な温熱環境を提供するために断熱に関する研究や技術開発、普及を目指すことを目的に活動する会です。

そしてこの会が戸建住宅の目指すべき断熱性能として提案している基準が
「HEAT20 G1/G2/G3グレード」
というものです。

具体的には以下のように設定されています。
地域区分 1,2 3 4 5 6,7 8
UA値
(G1グレード)
0.34 0.38 0.46 0.48 0.56 基準なし
UA値
(G2グレード)
0.28 0.28 0.34 0.34 0.46 基準なし
UA値
(G3グレード)
0.20 0.20 0.23 0.23 0.26 基準なし
UA値が低いほど断熱性能が高いため、G3>G2>G1の順番で高断熱であることがわかります。また、いずれの基準も断熱等性能等級4やZEHを上回っています。

国が設定している基準よりも高い基準を設定する必要があるのか?と思われるかもしれませんが、以下の表をご覧ください。

こちらはHEAT20が提示している各断熱性能のレベルと30年間でかかる総コストを比較したグラフです。

H25年基準となっているのが、断熱等性能等級4のことです。
左は電気代やガス代が変わらない場合、右は年1%上がることを想定したグラフです。

これをみると断熱性能が低いほど工事費は安くなりますが、長期間住むことを考慮すると暖冷房費のせいで総コストはかえって高くなっていることがわかります。

逆に断熱性能を高めると、工事費は上がりますが暖冷房費が安くなるおかげで総コストがある程度圧縮されます。

ただし、ある一定以上の断熱性能からは暖冷房費の低減効果が頭打ちになり始めるため、総コストは少し上がってしまいます。

そして30年間住むことを想定した時に、工事費と暖冷房費のバランスが取れているのがHEAT20のG1グレードであり、総コストが一番安くなっています。

ちなみに、今回は30年を想定していますが、40年・50年を想定した場合は暖冷房費を低減する効果がさらに有効になるため、そうなるとG1よりG2やG3グレードの総コストが安くなっていきます。

総コストのことを考えると私はHEAT20のG1を推奨したいです。

より快適な環境を望む場合はG2を目指すのもいいと思います。

G3まで行くとやや趣味の領域に入りますので、設計士の方とよくよく相談してください。

その他の基準

ここまで紹介した基準が、現状よく使われるものですが、それ以外にも以下のような基準があります。

・Q1住宅
新木造住宅技術研究協議会(通称:新住協)と呼ばれる団体が提唱する基準。
断熱等性能等級4と比較して、暖冷房にかかるエネルギがおおよそ半分以下になる家を指します。
前述の基準のようにUA値やQ値ではなく、燃費で定めているようです。

・パッシブハウス
ドイツ発の世界基準。
暖冷房にかかるエネルギに加えて、家電も含むエネルギ消費も基準に定められています。
また、断熱性だけではなく気密性も条件になっています。
これらの基準を満たし、認証機関に審査を受けることでパッシブハウスに認定されます。

・LCCM住宅
国が定めたものでLife Cycle Carbon  Minusの略称です。
ZEHが1年間に消費するエネルギをソーラーパネルによって収支ゼロを目指す住宅であることに対し、LCCMは住宅建設時のCO2排出量も含めてCO2の排出収支をマイナスにすることを目指した住宅です。
ZEHよりも厳しい基準ですが、もらえる補助金もZEHより高いです。

終わりに

前回は断熱性の数値の話、そして今回はその基準のお話をしてみました。

どちらも聞いたことない人にとってはなかなかなじみがなく難しい話ですが、これらを覚えておけばいい業者探しの参考になるかと思います。

ぜひぜひ、ポイントだけでも抑えてみてください。

では今回の話をまとめておきましょう。

各基準とUA値は以下の通りです。
地域によって基準が変わるので、その点にも気を付けてください。
地域区分(UA値) 1,2 3 4 5 6 7 8
断熱等性能等級4 0.46 0.56 0.75 0.87 0.87 0.87 基準なし
ZEH 0.40 0.50 0.60 0.60 0.60 0.60 基準なし
HEAT20 G1 0.34 0.38 0.46 0.48 0.56 0.56 基準なし
HEAT20 G2 0.28 0.28 0.34 0.34 0.46 0.46 基準なし
HEAT20 G3 0.20 0.20 0.23 0.23 0.26 0.26 基準なし
そしてこれらの各基準に関する(クロセ個人の)感覚は以下の通りです。

<高断熱側>
HEAT20 G3:かなりハイレベル。コスパは少し悪いが超快適。
HEAT20 G2:全館冷暖房でも光熱費を抑えられ快適。コスパは悪くない。
~高断熱の壁~
HEAT20 G1:30年程度暮らすにはコスパ良し。クロセが推奨したい最低限 。
ZEH:G1とほぼ同等。これから家を建てるなら満たしておくべき基準。
断熱等性能等級4:最低限。できればZEHまで引き上げたい。
<低断熱側>

こちらの記事でも書きましたが、高断熱な家を求めるならやはりG2グレードくらいは目指したいところですが、そこは自分の予算とご相談ください。

しかし、難しいことですが、例えばHEAT20のG2グレードの家を建てたとしても、ただ断熱性能を高めるだけで設計がしっかりしていなければ快適な家になるとは限りません。

ですので、これらの情報はいい業者を探すために活用してくれたらと思います。

では。

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ABOUTこの記事をかいた人

2020年2月からアイ工務店と一緒に建てたマイホームに居住中。 家の中が寒いのがいやだというところから家づくりを開始した結果、高断熱高気密という言葉に出会う。 以降、いろいろ調べているうちに高断熱高気密の沼にはまり、使者を自称するようになる。