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第3回 住まう地域の将来的な不動産価格の動向を予測するには

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住まう地域の地価動向を予測するための参考サイト

「このあたりの土地の将来性は、どのように考えますか?」
住宅の購入を検討されている方が、率直に尋ねてくるご質問です。

この質問に対しまして、確定的、または断定的な回答などは到底できないものですが、地域的な将来性を考えるうえで参考となり得るサイトをご紹介します。

東京都の地価Googleマップ版」です。東京都と表示されていますが、社団法人東京都不動産鑑定士協会が提供元であるためで、東京に限らず日本全国の土地に関するデータが閲覧できます。

このサイトは、特に事前登録などは必要がなく、どなたでも無料で利用できます。

サイトを開きますと、東京駅周辺の地図に青い斑点と赤い斑点が現れていますが、この斑点の箇所が、土地相場についてデータが示されている場所です。

右上の「地図検索」欄に、調べたい場所の住所を入力して検索開始をしますと、ダイレクトに調べたい場所の地図が現れます。

調べたい場所の近くにある青または赤い斑点をクリックしますと、地価に関するデータが別ウィンドウで現れます。

別ウィンドウで表されたデータのうち、右にあります「地価の推移」において、直近の地価(㎡あたりの土地単価を示す)が、おおよそ10年前のミニ・バブルと呼ばれた時期の地価水準まで回復している地域は、「今後も将来的な見込みが期待できる地域です」とアドバイスをしています。

他方で、おおよそ10年前からほぼ地価の下落が続いている地域などは、将来的な見込みが薄い地域であると考えられます。


公的な土地価格に関するデータ「公示地価格」と「基準地価格」

上記の地価マップに表されている青い斑点と、赤い斑点の内容について、軽く説明をさせて下さい。

青い斑点の地価データは「公示地価格」と呼ばれるもので、毎年3月中旬から下旬くらいに国土交通省から発表されます。よくニュースなどで、「今年、日本一地価が高かったのは、東京都中央区の銀座4丁目にある山野銀座本店前で、1平方メートルあたり○千万円でした」などと報道がされる土地価格のことです。

公示地価格は、その年の1月1日時点の価格を国土交通省が調べて公表しています。地域の標準的な場所について選定をして、その場所の地価を毎年継続して調べますので、地価が上がっている地域なのか、または下がっている地域なのかが公表されることになります。

対して赤い斑点は、「基準地価格」と呼ばれるもので、毎年9月中旬から下旬くらいに発表されるもので、所管は都道府県です。基準地価格は、その年の7月1日時点の価格について調べています。前記の公示地価格が1月1日時点ですので、ちょうど半年ずらした時点です。公示地価格と基準地価格の二つで、毎年2回、行政機関が公的に土地価格を調べて公表をしているのです。

ちなみに、公示地価格も基準地価格も、調べる場所(同じ場所のものもあります)と調べる時点が違っているだけで、調査方法などは基本的にほぼ同じです。

一点注意して頂きたいことは、公示地も基準地も、毎年同じ場所の土地価格を調べますが、調べる場所の地域性が変わるなど、その地点が地域の標準的な土地ではなくなるなどした場合には、調査場所の選定替えをします。その場合には、先ほどの「地価の推移」のデータが数年程度のデータしかない場合もあります。

調査場所の選定替えによって、過去数年程度しか地価推移のデータがみられない場合には、少々離れている場所のデータでも良いので、なるべく過去10年程度のデータが示され、調べたい場所と地域性が類似している地価公示または地価調査の価格を調べてみて下さい。

住みたい場所の土地価格をみるうえでとても有用!「相続税路線価」

前記の「公示地価格」と「基準地価格」は、その地域の代表的な場所の土地価格に関するデータでしたので、かなり場所が限られたものでしたが、調べたい場所について、広く土地価格に関するデータが示されているのが「相続税路線価」です。

相続税路線価は、土地の相続財産評価などを行う際に用いるものですが、きめ細かにデータが示されていますので、我々のような不動産取引に関する専門家でも頻繁に参考として使用しています。

「相続税路線価」を手っ取り早く調べるための有用なサイトをご紹介します。一般財団法人資産評価システム研究センターが提供しているサイト「全国地価マップ」です。このサイトは、事前登録などは必要がなく、どなたでも無料で利用ができます。

「全国地価マップ」サイトでは、「固定資産税路線価」、「相続税路線価」、「地価公示・地価調査」の3種類の価格が閲覧できます。中ほどの「相続税路線価」をクリックしていきますと日本地図が現れます。日本地図の左上の欄に、調べたい場所の住所を入力して検索をしますと、ダイレクトに調べたい場所の相続税路線価が現れます。

相続税路線価は、土地の相続財産価格などを算出するためのものですので、あくまで実際の取引価格を表すものではありません。しかしながら、相続税路線価の7割から8割程度の水準が、おおよその土地取引水準と一般的に捉えられています。

従いまして、相続税路線価を0.7ないし0.8で割り戻せば、「当たらず、遠からず」の地価水準を調べるための有用なツールとなるわけです。

下図のように、調べたい土地が接している道路に表された数字が、㎡あたりの土地単価を表しています。単位は千円ですので、仮に「300C」と表されていれば、㎡単価として300,000円を示しています(アルファベットは借地権割合を示しますので、ここでは無視して頂いて構いません)。

ですので、相続税路線価の数字が「300」であり、調べたい土地の面積が100㎡であれば、300,000円/㎡×100㎡で3,000万円となり、この数字を0.7ないし0.8で割り戻せば、4,280万円から3,750万円くらいまでの間であると、おおよその土地価格を算出できるわけです(あくまで土地価格ですので、建物価格は含んでいません)。

注意点として、「相続税路線価」が表示される場所は、基本的に「市街化区域」と呼ばれる地域について付されるものですので、調べたい場所の相続税路線価が示されていない場合もあります。また、上記で計算された土地の概算価格は、土地がほぼ整形なものとした場合の価格であるので、専用通路を伴うなど、土地に顕著な個性がある場合には、個別性に関する要素を加えて価格を算出する必要があります。

ちなみに、「全国地価マップ」サイトでも、先ほどの「地価公示・地価調査」の価格を調べることができますが、直近数年間分の閲覧に限られますので、地価公示・地価調査について過去10年分のデータを閲覧するには、「東京都の地価Googleマップ版」の方が優れています。


松本 智治 このコラムの執筆者
松本 智治(マツモト トモハル)
不動産鑑定評価システム代表、不動産鑑定士。不動産仲介から戸建て建築、宅地造成、ビル再開発、賃貸アパート大家業、エリア調査まで、不動産に関わる現場を広く経験しているのが強み。

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