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第2回 人生100年時代において改めて考える「購入と賃貸、どちらが得か?」

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生100年時代においては、住居費の考え方が変わってきます。住居費は、生きている限り関わる「お金」に関する問題です。それゆえ、平均寿命が長くなれば、住居費は人生設計における課題または相応のリスクになるからです。

著者が住宅の購入に関する第三者オピニオンの際に使用しております「賃貸と購入の損得シミュレーション」である下記表で、具体的に提示してみます。

このような購入と賃貸の比較を行う際には、支払う家賃の総額と、住宅ローンの支払金額を比較するだけでは、適切な比較は行えません。住宅を購入する場合には、住宅ローンの支払いとともに、建物の劣化した部分を定期的に修繕するための費用や、固定資産税の支払いなども考慮する必要があります。

このシミュレーションでは、これら持ち家に関するランニングコストも考慮しています。また、住宅購入時に必要とされる初期費用であるイニシャルコストや、住宅ローン控除などの還付金に関する金額も、一定額を考慮しています。

「購入派(赤色)」と示された場合には、賃貸よりも住宅を購入した場合の方が金銭的に得をすることを意味します。また、居住期間が30年の場合と50年の場合とでは、居住期間が長いほど、購入した方が金銭的には得をすることが多くなるものと考えられます(家賃は、あなたが支払うと考えられる30年または50年間の平均家賃の額として考慮して下さい)。

居住期間が長くなる、すなわち、自分や配偶者の寿命が長くなることを考えれば、持ち家の方が、金銭的には有利であることが多くなることを示しています。


購入と賃貸の損得を見極めるために、必要なことは何か?

購入と賃貸の金銭的な損得を考える場合には、「持ち家が将来いくらで売却できるか」ということも大きく依存します。

先のシミュレーションにおいては、購入した住宅が30年経過後には50%下落(例えば、3,000万円で購入した住宅が30年後に1,500万円で売れること)した場合、50年経過後には60%下落(3,000万円で購入した場合、50年後に1,200万円で売れること)するものとそれぞれ条件設定をしています。

ゆえに、将来の売却価値である「住宅の資産性」について充分意識をして購入をしなければ、金銭的には、賃貸の方がむしろ有利となります。

このように、賃貸と購入の損得を見極めるために必要な要因には、主に下記のようなものがあります。

・住宅ローン金利の水準(30年など長期固定金利でシミュレーションをすべき)
・持ち家に関する「イニシャルコスト」と「ランニングコスト」を考慮すること
・将来いくらで売却できるかという「住宅の資産性」(転売利益は安易に見込まないこと)
・住まう期間について改めて考慮する(自分や配偶者の寿命を意識すること)

これらのうち「住宅の資産性」について、仮に、永住を見込んで売却による換金を考慮しない場合、または、子供への相続財産性を考慮しないことを想定した場合には、前記とは異なり、下記のような損得シミュレーションとなります。

この場合は、将来の転売価値をゼロとして条件設定をしています。居住期間を30年とした場合には、住宅を購入せず賃貸とすることの方が、金銭的には得をすることが多くなります。ただしこの場合にも、居住期間50年においては、購入した方が得となることが多くなることは注目すべきポイントといえます。すなわち、購入した場合には、住んだ期間が長ければ長いほど有利であることになります。


なぜ賃貸には、充分な広さのファミリー向け間取りが少ないのか?

住まいを購入したいと考え始めた動機の上位に「もっと広い住まいに住みたいから」という理由が挙げられます。

子供の成長とともに今の間取りが手狭になり、もっと広めの住宅へ引っ越しを検討し始めたときに、なかなか理想的な広さや間取りの賃貸住宅が少ないと感じた方も多いのではないでしょうか。

なぜ賃貸住宅には、4LDKなど充分な広さのファミリー向け間取りが少ないのでしょうか。実は、賃貸住宅を建築する大家さんの立場からみれば、自ずとその理由が分かります。

ひとことで言えば、賃貸住宅の経営をする大家さんにとって、「部屋の間取りを広くすればするほど、収入に関する投資効率が悪くなるから」ということになります。

ファミリー向け住宅を建てる場合と、ワンルームを建てる場合とでは、面積当たりの家賃単価は、狭いワンルームの方が高く取ることができます。

このとき、ファミリー向けの建物と比べて、ワンルームの建築費が同じ割合で高くなるのであれば、どちらも投資効率は同じになりますが、建築単価はどちらも家賃単価の違いほど大きな差異はありません。それゆえ、狭いワンルームの方が、広いファミリー向けよりも投資利回りが良いのです。

他方で、駅から離れた利便性に劣る地域では、ワンルームの借り手は少なくなりますので、ファミリー向けの住宅を建築する場合が多くなりますが、この場合においても、部屋の間取りをできるだけ狭くすることで、投資効率を上げられます。

このような関係から、不動産経営を行う大家さんが賃貸住宅を建築する際には、投資効率を良くするため、間取りは極力狭めに建てることになります。それゆえ、4LDKなどの充分な広さのファミリー向け賃貸というのは、あまり建てられないものとなります。


松本 智治 このコラムの執筆者
松本 智治(マツモト トモハル)
不動産鑑定評価システム代表、不動産鑑定士。不動産仲介から戸建て建築、宅地造成、ビル再開発、賃貸アパート大家業、エリア調査まで、不動産に関わる現場を広く経験しているのが強み。

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