第24回 中古住宅を買うなら住宅ローン控除の手続きを忘れないように

住宅を購入しようとしている人の多くは、住宅ローン控除という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。不動産会社によっては、これを買主の大きなメリットととらえて購入動機にしようとアピールしているケースもあります。
今回は、住宅ローン控除の基礎知識と中古住宅を買う人が注意すべきローン控除の注意点や落とし穴についてお話します。
1住宅ローン控除とは?
住宅ローン控除とは、家を買うときに住宅ローンを利用することで所得税や住民税が安くなるというもので、正しい名称は住宅借入金等特別控除という制度です。
1-1.住宅ローンを組んで家を買えば税金が安くなる
家を買うときにはほとんどの方が住宅ローンを組みますから、これによって税金が安くなるというのは魅力的なものです。
住宅ローンの毎年末の借入残高の1%(平成33年までに居住した場合はこの控除率だが、その後は変更・廃止の可能性もある)を所得税から税額控除するもので、上限は毎年40万円(※)となっています。控除期間は10年までとなっているため、最高で400万円の控除を受けられるわけです。
※長期優良住宅等なら50万円ですが、コラムの趣旨からずれるため詳細は省略します。
とはいえ、10年後も借入額が4000万円もある人は少ないですから、最高額まで控除を受けるケースは稀です。
1-2.住宅ローンで支払う金利よりも減税効果が大きいこともある
一方で住宅ローンの金利は低金利が続いています。10年固定金利のものもあり、借入条件次第では金融機関に支払う利息よりも減税額の方が大きくなる可能性もある状況です。このことは、自己資金が十分にある方でも、あえて住宅ローンを利用する動機にもなっています。
1-3.住宅ローン控除の要件に要注意
ただ、控除のメリットを得たい方が注意しておきたいことがあります。それは、家を買って住宅ローンを組む人の全てが対象になるわけではないという点です。
・所得額が3000万円以下であること
・住宅の新築または取得から半年以内に居住すること
・ローン控除を提供する年の年末まで居住していること
・床面積が50平米以上でその半分以上が住居用であること
・住宅ローンの借入期間が10年以上であること
などの条件があるのです。そして、前置きが長くなりましたが、今回のテーマである中古住宅については築年数の要件も重要になります。これについては以降でお話します。

2中古住宅購入で住宅ローン控除を受けるには
住宅ローン控除の対象は新築住宅を買う人だけではなく中古住宅を買う人も含まれます。但し、新築よりも中古の方が控除対象外となってしまうケースが多いため、中古住宅を買う人は理解しておきたいものです。
2-1.築年数の要件
控除対象の住宅の要件の1つに、耐火建築物なら築25年以内、耐火建築物以外なら築20年以内というものがあります。この築年数未満の住宅ならば、中古でも住宅ローン控除の対象となるので安心です。耐火建築物と言われてもわかりづらいですね。
耐火建築物:鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨造(但し、軽量鉄骨造は含まない)
耐火建築物以外:木造や軽量鉄骨造
基本的には以上のようにわけることができます。この種別は建物の登記簿で確認するものですから、登記事項証明書を法務局で入手して確認してみましょう。法務局に行かなくても不動産会社が取得して確認していることが多いですから、不動産会社に聞いてみてもよいです。
2-2.耐震診断と既存住宅売買瑕疵保険という対策
前述の築年数の要件に該当しない中古住宅を買う場合、住宅ローン控除を受けられないということになりますが、実は控除を受けられる方法があります(全ての物件で控除してもらえるわけではないです)。
「地震に対する安全上必要な構造方法に関する技術的基準又はこれに準ずるもの (耐震基準)に適合する建物であること」という条件に該当すれば、控除の対象となるのです。具体的には以下の方法が挙げられます。
・耐震診断で一定基準を満たしていることを確認する(耐震基準適合証明書を取得)
・既存住宅売買瑕疵保険に加入する(保険付保証明書を取得)
・建設住宅性能評価書(耐震等級が1以上と評価されたもの)を取得する
現実的には上のうち、前の2つ(耐震基準適合証明書か保険付保証明書の取得)によって条件を満たすケースが多くみられます。
2-3.不動産仲介業者が知らないこともある
築20年超(耐火建築物なら25年超)の中古住宅を買うとき、不動産仲介業者から耐震診断や既存住宅売買瑕疵保険のことを説明してもらい、きちんと手続きをとっておけばよいのですが、知らせてもらっていない人も多いです。残念ながら、このことを知らない業者や営業マンが少なくないからです。
売買契約を結び、引渡しも受けて、確定申告のシーズンに入ってから「耐震基準適合証明書を取得したい」と問合せを受けることが非常に多いですが、そのタイミングからでは住宅ローン控除を受けることはできません。引渡し前に実施すべき必要な手続きがあるからです。
既存住宅売買瑕疵保険についても引渡し前に手続きが必要です。
2-4.耐震診断と既存住宅売買瑕疵保険も不適合となることが多い
最後に、買主の皆様には残念なお話になりますが、これが現実なのでお伝えしておかなければなりません。
耐震診断も既存住宅売買瑕疵保険も現場で建物を検査して、それぞれの基準に適合しなければなりませんが、検査の結果、不適合となる物件は多いです。古い建物は、耐震性が基準に満たないケースは多いですし、建物の劣化事象が既存住宅売買瑕疵保険の検査基準に該当してしまうことも多いです。
ただ、引渡し後の耐震改修工事や補修工事等で適合させ、最終的に住宅ローン控除を受けられることもありますから、経験のあるホームインスペクション(住宅診断)業者などに事前に相談して進めてみるとよいでしょう。耐震診断にも既存住宅売買瑕疵保険にも同時対応してくれる業者に相談することをお勧めします。
築20年超(耐火建築物なら25年超)の中古住宅でも住宅ローン控除をあきらめない
引渡し前に必要な手続きをとる
但し、結果的に住宅ローン控除を受けられないことも多い

荒井 康矩(アライ ヤスノリ)
2003年より住宅検査・診断(ホームインスペクション)、内覧会同行、住宅購入相談サービスを大阪で開始し、その後に全国展開。(株)アネストブレーントラストの代表者。
コラムバックナンバー
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