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第16回 建売住宅の購入時に必要な諸費用

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売住宅を購入する際に買主が負担する金銭は売買代金以外にもいろいろなものがあり、その金額も決して小さなものではありません。なかには、不審な請求が含まれている場合もあるため、売買契約を締結する前に確認しておきたいものです。

1住宅購入時の諸費用に関するトラブルは意外と多い

建売住宅にかかわらず、住宅購入に際しては様々な諸費用が生じます。正当で必要なものもあれば、不動産会社から不当に請求されているものや本来の金額よりも高額な請求をされているものを見かけることもあり、注意が必要です。

売買契約に際しては、必ず、諸費用の項目とそれぞれの金額を書面で提示してもらい、その内容を十分に確認してから契約するようにしてください。

明らかに高すぎる金額を支払ってしまった後に、その事実に気づき、不動産会社に返金請求しても容易には応じてもらえないという事例はいくつもあります。売買代金が大きいだけに諸費用への意識が薄くなる人もいますから油断しないようにしましょう。

2建売住宅購入に必要な諸費用

2-1.諸費用の概算金額

それでは、建売住宅を購入する際にかかる諸費用として、いったいいくらぐらいの予算を見ておけばよいのでしょうか。売買代金に対する諸費用の割合で見てみましょう。

仲介手数料が不要な取引の場合 「3~5%程度」
仲介手数料が必要な取引の場合 「6~8%程度」

その物件の売買に際して仲介手数料が必要かどうかによって、諸費用の金額は大きな違いがあります。上の通り、その違いは3%です。

仲介手数料は、売主から直接購入せず、仲介業務を営む不動産会社に物件を紹介・斡旋してもらったときにその不動産会社へ支払う手数料です。その手数料は、売買代金の約3%(詳細は後述する)であるために、このような差が生まれるのです。

仮に、売買代金が3,000万円の物件であれば、以下の諸費用となります。

仲介手数料が不要な取引の場合 「90~150万円(税別)」
仲介手数料が必要な取引の場合 「180~240万円(税別)」

金額を見るとわかるように、大きな額です。1つ1つの諸費用項目について丁寧に確認しなければならないと感じるのではないでしょうか。

2-2.諸費用の項目一覧

次に、建売住宅購入に際して一般的に生じることの多い諸費用の項目をあげておきます。

・仲介手数料
・印紙代
・登記費用
・固定資産税・都市計画税
・ホームインスペクション費
・住宅ローン関連費用
・住宅ローン代行料・斡旋費
・火災保険料・地震保険料
・プラン変更にかかる費用(設計料等)

多くの項目があることがわかりますが、全ての売買において、これらの項目の全てが必要になるというわけではありません。取引によって相違がありますので、この点については次の「3.建売住宅の諸費用を解説」でご覧ください。

3建売住宅の諸費用を解説

3-1.各所費用の解説

ここでは、「2-2.諸費用の項目一覧」であげた項目について、解説していきます。あまり詳細な解説をしても、全て理解することは困難ですから、建売を購入する人が抑えておきたいポイントに絞って解説します。

●仲介手数料
仲介手数料は前述の通り、売主から直接購入せず、仲介業務を営む不動産会社に物件を紹介・斡旋してもらったときにその不動産会社へ支払う手数料です。つまり、売主から直接購入する取引であれば、この手数料は必要ありません。

必要な場合の金額は、売買代金に対して以下の割合が上限となっています。

たとえば、売買代金が3000万円である場合は以下の通りとなります。

これを見て気づく人もいると思いますが、多くの建売住宅の売買代金は400万円を超えますので、10万円(売買代金の200万円以下の部分)と8万円(売買代金の200万円超、400万円以下の部分)はかかることになり、売買代金の400万円超の部分のみが売買代金によって変動することになります。

ちなみに、簡単に仲介手数料を計算する際は、

売買代金 × 3% + 6万円 = 仲介手数料(税別)

によって求めることができます。

●印紙代
建売住宅の購入に際して必要な印紙は、売買契約書と住宅ローンの融資契約書(金銭消費貸借契約書)に貼るものです。この印紙代は本来の税率(本則税率)と軽減された税率(軽減税率)があり、その税率は以下のようになっています。

売買契約書は軽減対象ですので、軽減税率が適用されますが、住宅ローンの融資契約書(金銭消費貸借契約書)は本則税率が適用されます。

●登記費用
不動産を購入すれば登記費用がかかります。建売住宅の場合は、土地の所有権移転登記、建物の表題登記、建物の所有権保存登記の費用が買主負担となることが一般的です。

登記費用は登録免許税と司法書士への報酬(交通費等も)によって構成されるものですが、司法書士から明細を受領することができます。売買契約の時点では詳細な金額まで算出されていないことが多いため、不動産会社から提示される諸費用の概算書には概算金額が記載されています。

●固定資産税・都市計画税
土地と建物には固定資産税と都市計画税がかかり、これを毎年納める必要があります。そして、建売住宅を購入したときには、既に土地に対してはこれらの税金が課税されておりますので、土地分については買主も負担する必要があります。

その年度分について、引渡し日までの分は売主が負担し、引渡し日以降の分は買主が負担するのですが、その年の分の全額が自治体から売主へ請求されるため、日数に応じた買主の負担分を買主から売主へ支払う必要があるのです。

●ホームインスペクション費

建売住宅を購入する際に、ホームインスペクション(住宅診断)を利用する人も多くいますが、利用する場合、その費用の負担が生じます。

利用するタイミングは売買契約前であったり、契約後・引渡し前であったりとケースによって異なりますので、ホームインスペクション会社に相談して決めるとよいでしょう。

料金の参考として筆者の会社(筆者はホームインスペクション会社を経営)の例をあげると、完成物件の診断は5~12万円程度(地域やオプション利用の有無によって異なる)です。未完成物件なら、建築中に行うインスペクションがありますが、その検査回数によって10万円台~です。

●住宅ローン関連費用
融資を受けて住宅を購入する人が多いですが、その場合、融資関連の費用がかかります。これは借入する金融機関や住宅ローンの種類によって異なりますが、以下のものが考えられます。

・融資手数料・事務手数料
・保証料
・印紙代

融資手数料・事務手数料は金融機関へ支払うもので、その金額は数万円程度であることが多いですが、なかには10万円を超えるものもあります。
保証料も金融機関へ支払うもので、その金額は借入額等の条件によりますが、数10万円になることもあれば、無しということもあります。
印紙代は金銭消費貸借契約書に貼る印紙の費用であり、前述の印紙代に記載の通りの金額です。

●住宅ローン代行料・斡旋費
不動産会社によっては、融資手続きを代行する必要を請求することがあります。この費用は請求しない会社も多いため、早い段階で費用が必要なのかどうか確認しておきましょう。

その金額は、10万円までということが多いですが、30万円などと高額な請求をされるケースもあるため、注意しましょう。手続きと言っても大した業務ではないことから、10万円を超える請求については疑問が大きいです。

また、不動産仲介業者が前述の仲介手数料を請求しておきながらも、住宅ローン代行料・斡旋費まで請求することには異論が多く、交渉の余地があると考えてよいでしょう。

●火災保険料・地震保険料
保険の加入は任意ですが、ほとんどの人が火災保険には加入しています。また、地震保険に加入する人も多いです。他には、家財保険に加入する人もいますが、いずれも任意ですからよく考えて判断してください。

●プラン変更にかかる費用(設計料等)
建売住宅とはいえ、未完成物件の取引をする場合には、内装等の変更希望に応じてもらえることがあります。その変更内容によっては、別途費用がかかることもあるため、都度、売主に確認しなければなりません。設計料、材料費などの請求が考えられますが、現実には設計と材料にわけることなく、まとめた金額で請求されることが多いです。

3-2.注意すべき諸費用の項目

建売住宅では、通常は請求されることのない費用であるにも関わらず、買主負担だとして請求される費用もあります。その事例をあげておきますので、売主負担とすべきではないか、なぜ買主が負担しなければならないかを確認しておきましょう。

●建築確認費
建物を建てるときに施主が行う建築確認申請とその後の検査(中間検査・完了検査)には費用がかかりますが、これについては本来なら施主が負担すべきものです。
建売住宅における施主とは不動産会社(売主)です。つまり、売主が負担すべきものであるにも関わらず、買主に負担を求めることがあるため注意してください。

●地盤調査費・地盤改良費
建物を建築する前に地盤調査を行います。そして、その調査結果と建物プランに応じて地盤改良工事を施工することがあります。建売り住宅では、これらの費用は売主が負担すべきものですが、買主へ請求することがあるため注意してください。

●水道分担金・水道加入金
新しく水道を新設する場合には、水道分担金(地域によっては水道加入金などと呼ぶ)が生じます。建売住宅であれば、これも売主が負担すべきものですが、買主に請求することがありますから注意してください。

●住宅瑕疵担保責任保険の検査料・保険料
新築住宅の取引に際しては、売主が法務局へ保証金を供託するか住宅瑕疵担保責任保険に加入するかのいずれかが義務となっていますが、中小規模の不動産会社であれば、住宅瑕疵担保責任保険に加入する方法を選択していることがほとんどです。

住宅瑕疵担保責任保険に加入するには、所定の簡単な検査を受けたうえで保険料を支払う必要があるのですが、その費用を買主に請求することがあります。建売住宅ではこれも売主が負担すべきものです。

ここであげた費用以外にも何らかの名目で請求されることがあれば、インターネットで検索して調べてみましょう。不当なものもありうるので、言われるままに支払うのではなく、きちんと根拠を確認する姿勢が大切です。

荒井 康矩 このコラムの執筆者
荒井 康矩(アライ ヤスノリ)
2003年より住宅検査・診断(ホームインスペクション)、内覧会同行、住宅購入相談サービスを大阪で開始し、その後に全国展開。(株)アネストブレーントラストの代表者。

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