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第47回 住宅(不動産)にかかわる民法改正の概要(2)

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回は前回から始まった新テーマ、住宅(不動産)にかかわる民法改正の第2回です。前回に引き続き、住宅(不動産)売買にかかわる民法改正の概要をみていきます。

1危険の移転

改正法では、目的物の滅失や損傷の場合の危険の移転に関して、条文(567条)が新設されました(旧567条は、修正、一部削除のうえ570条に移動)。

新567条では、目的物に契約不適合(契約不適合については、別の回で詳しく取り扱う予定です。)があった場合でも、引き渡しによって目的物の支配は売主から買主に移転することから、目的物の引き渡しが行われた後に売主に帰責事由のない滅失や損傷が生じた場合には、買主はそれらを理由とする追完請求等はできないと定めています。

目的物の契約不適合については、それ自体の問題としての処理することとし、危険の移転については、契約内容への適合を移転の要件とはしていない点が注目されます。

(改正法)

567条(新設)

1 売主が買主に目的物(売買の目的として特定したものに限る。以下この条において同じ。)を引き渡した場合において、その引渡しがあった時以後にその目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、買主は、その滅失又は損傷を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。この場合において、買主は、代金の支払を拒むことができない。

2 (省略)

2買戻し

売買における買戻しについては、改正前にも定めがありましたが、今回の改正により、担保以外の目的で買戻しが用いられる場面を念頭に、売主が返還すべき金銭の範囲につき、当事者の合意で定めることができると明記して任意規定とされました(579条)。、これにより、柔軟な取り扱いが可能となり、買戻しの利用が容易になりました。

他方、改正前の「買主が支払った代金・・及び契約の費用」の表記は残され、当事者間で別段の合意がない場合の返還の範囲は、改正前と同様とされました。

また、買戻しにおける対抗要件についての明確化も行われました(581条)。

(改正法)

579条

不動産の売主は、売買契約と同時にした買戻しの特約により、買主が支払った代金(別段の合意をした場合にあっては、その合意により定めた金額。第583条第1項において同じ。)及び契約の費用を返還して、売買の解除をすることができる。この場合において、当事者が別段の意思を表示しなかったときは、不動産の果実と代金の利息とは相殺したものとみなす。

581条

1 売買契約と同時に買戻しの特約を登記したときは、買戻しは、第三者に対抗することができる

2 前項の登記がされた後に第605条の2第1項に規定する対抗要件を備えた賃借人の権利は、その残存期間中1年を超えない期間に限り、売主に対抗することができる。ただし、売主を害する目的で賃貸借をしたときは、この限りでない。

3売主の担保責任と同時履行

改正前の571条は、売主の担保責任と同時履行について、533条を準用する旨を規定し、売主の担保責任に基づく填補賠償債務と買主の代金支払債務の同時履行を定めていました。しかし、533条が、債務の履行に「債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む」と明記したことで、同条が直接適用されるようになりました。これにより改正前571条の意義が乏しくなったため、571条は削除され、双務契約一般の同時履行を定める533条で規律されることになりました。

(改正法)

533条

双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。

ポイント

売買の目的物に関する危険の移転に関しては、条文が新設され、契約目的への適合、不適合を問わず、目的物の引き渡し時点を基準として危険が買主に移転することとされた。
売買における買戻しについては、返還されるべき金銭の範囲に関し、当事者間の合意で定めることができるとして、柔軟な取り扱いを認める改正が行われた。買戻しにおける対抗要件についても明確化された。
売主の担保責任と同時履行については、双務契約一般の同時履行を定める533条で規律されることとされた。

次回は、売買に関する改正の中心の一つとされている契約不適合の問題を取り扱う予定です。契約不適合は様々な論点を含みますので、何回かに分けてみていく予定です。

原田真 このコラムの執筆者
原田真(ハラダマコト)
一橋大学経済学部卒。株式会社村田製作所企画部等で実務経験を積み、一橋大学法科大学院、東京丸の内法律事務所を経て、2015年にアクセス総合法律事務所を開所。
第二東京弁護士会所属。東京三弁護士会多摩支部子どもの権利に関する委員会副委員長、同高齢者・障害者の権利に関する委員会副委員長ほか

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