第12回 建売住宅の見学時における基礎的なチェックポイント

1間取り(部屋の広さ)

見学へ行く物件は、多くの場合、広告などで先に間取り図を見ていることでしょう。間取り図を見ている段階で、部屋数や各部屋の広さを確認していることと思いますが、現地でも改めて確認しましょう。
特に注意して確認してほしいのは各部屋の広さです。広告などの間取り図では、「洋室6帖」のように何帖であるか表記していることが多いですが、この表記から受ける印象と見学時に現場で見た広さに相違を感じる人は少なくありません。売主や販売会社が計算して表示している広さと買主の感覚にずれがあるからです。
買主の多くは、その時点で住んでいる自宅の部屋の広さをイメージします。「今の寝室が6帖だから、この物件の寝室も同じか」と考えるのですが、実態が異なることもあるということです。
また、新築の建売住宅を見学するときには家具などが無いため、広さを正確に感じづらいという問題もあります。そこでお奨めの方法は、今の自宅の家具(ベッド・ソファ・テーブル等)のサイズを計測しておき、見学時にメジャーで家具を置く位置を計測して確認してみたらスペースのゆとりがどうなるのか確認するというものです。
例えば、見学する物件の子供部屋に120cm×200cmのベッドを置いて、さらにデスクや棚を置くと空いたスペースが今の自宅の子供部屋より窮屈かどうかわかりやすくなります。
2間取り(動線)
間取りをチェックするときには、動線の確認も忘れないでください。動線とは、その住まいで暮らすときの人の動きの流れです。
それぞれの家族によって異なることですが、例えば、以下のような場面を想像して家族の動きを確認してください。
- ・夫が起床してから朝食をとり外出するまでの動き
- ・妻が起床してから朝食を準備して家族を送り出すまでの動き
- ・子供が起床してから朝食をとり外出するまでの動き
- ・洗濯してからその洗濯物を洗濯干しスペースへ持っていく動き
- ・乾いた洗濯物を取り入れて収納するまでの動き
- ・子供が帰宅して子供部屋へ行く動き
他にも家族構成などによって考えるべき動線はいろいろとありますが、それらを1つ1つ想像してください。子供が帰宅してから顔を見ることもなく自室へ入ってしまうとか、洗濯物を干すのに階段を往復しなければならないとか、問題点がないか確認するのです。
特に3階建て住宅を検討しているときは、時間をかけてチェックしてみましょう。
3立地・環境

不動産を買うときは立地が大事だとはよく言われることですが、資産価値にメリットになるかどうかということだけではなく、個々の家庭によって重視する立地条件は異なることでしょう。立地や環境についてチェックする上で考えておきたい項目をあげておきます。
3-1.スーパー・病院までの距離やルート
スーパーは日常的に利用するものですから重要だと考える人は多いです。自転車で行くならば、荷物を積んで乗ることを考慮して安全なルートであるかも確認しておきたいことです。
家族のうち病院へ頻繁に通うことがあるのであれば、その距離やルートもチェックしておきたいものです。高齢者が通うのであれば、その距離は重要視される項目です。
3-2.学校までの距離やルート
子供がいる家庭では、学校までの距離やルートは大事でしょう。特に通学路の安全性は気になる項目ですから、実際に平日の朝や夕方に歩いて確かめたいものです。幹線道路や交通量の多い道路を横断するのを避けたいという考えもありますし、人通りの少ないルートも心配です。
3-3.駅・バス停までの距離やルート
通勤や通学で気になるのは、駅やバス停との距離関係です。混雑する時間帯の踏切が盲点になっていることもありますから、よく利用する時間帯に想定される交通手段(徒歩・自転車等)で試しておきたいところです。
3-4.その他の施設等
他の施設でも家庭によっては重視したいものがあります。小さな子供と出かける公園や朝の散歩コースとなる緑地、夜中によく行くコンビニなど、皆さんにとって近くに欲しい施設などが無いかチェックしましょう。
役所も近い方が便利だと考える人もいますが、普段は用事がないので遠くてもよいと考える人もいます。実際の生活などを思い浮かべながら考えてみてください。生活関連施設は、個々によって優先順位が異なりますから自分でよく考えることです。
4売買契約に含まれる範囲の確認
建売住宅は、借地でない限りは土地と建物本体が売買契約の対象となっていますが、物件によって契約対象の範囲が異なっているものがいくつもあります。最初に見学した物件では、網戸が付いていたけどその次に見た物件では付いていないといったこともあるのです。
どこまでが含まれているのかよく確認していないと後悔することになるでしょう。
それでは、契約対象に含まれないことがあり、且つ買主が知らなかったと後から確認漏れを後悔している代表的なものをあげておきます。
- ・カーテンレール
- ・網戸
- ・雨戸・シャッター
上の3点は完成済みの物件を見学していた人でも、これらが無いことに気づいていないことがあるものです。建売住宅は、コストダウンのために以前ならばどの物件でも付いていた設備が付いていないケースは少なくありません。
これらを後からオプションで設置してもらうとそれなりの価格になりますから、複数物件を比較検討するときには必要な設備のオプションか確認も含めて検討しなければなりません。
未完成の建売住宅を買うときには、上の3点以外にも外構工事について確認しておきましょう。たとえば、駐車場の仕上げ工事がどういったものか、道路から玄関までのアプローチはどうなるのか、道路や隣地との境界に塀やフェンス、植栽などがあるのかといったことを確認しましょう。
これらも価格に大きく影響するものですから、比較検討するときには大事な要素となります。
5点検口の有無

住宅を購入するときに是非チェックして頂きたい大事なポイントの1つは、点検口の有無です。
購入した後には、買主はその住宅を管理して、長く良い状態で暮らしていける住宅としたいものです。そのためには、建物の点検と修繕・メンテナンスを適切に、且つ継続的に実施していくことこそが非常に大事です。
この点検をするためには、点検口が必要です。床下や屋根裏の内部を点検して異常が無いかどうか確認し、異常が確認されれば修繕等の対応をしていく必要があるのです。もし、点検口の無い住宅であれば、建物の異常に気付くことが遅れることが懸念されます。
また、建売住宅を購入するときに、第三者に住宅診断(ホームインスペクション)を依頼することも多くなりましたが、この診断においても点検口があるかどうかで調査できる範囲が異なります。もちろん、点検口がある方が好ましいわけです。
点検口は、買主が普段は見ることのない床下や屋根裏を見られるところに必要です。床下点検口は床下収納庫が兼ねていることが多いですから、収納庫があればそれが点検口を兼ねているかどうか売主へ確認しましょう。そして、実際に収納庫をあけてもらい床下を見ることができるかどうか確認してください。
屋根裏点検口は最上階の天井にあります。クローゼットの天井などに設置されていることが多いですが、図面と現地見学において場所を確認しておいてください。こちらも実際に点検できるか開けてもらった方がよいでしょう。ロフトがある住宅では、そのロフト内に屋根裏点検口が設置されていることもあります。
また、ユニットバスの天井にも点検口が付いています。但し、この点検口から確認できる範囲は限定的であることが多いですから、これだけでは不十分です。
床下や屋根裏の点検口内部へ進入して確認するのは、一般の人には危険ですから、点検するならば住宅診断会社に依頼するとよいでしょう。
6地盤
住宅を購入するときに地盤について心配する人は多いです。地盤が良くないと、建物の工事が良くても傾くなどの問題を引き起こす可能性があるため、心配するのも無理はありません。
幸いにも建売住宅を購入するときには、地盤調査資料を閲覧することができます。新築する前に地盤調査をしており、その調査結果の資料があるのです。これを見ることで地質・地盤の強度などがわかりますから、ぜひ入手して閲覧したいものです。
但し、その調査データを見ても理解することは難しいため、売主からきちんと説明を受けるか、住宅診断(ホームインスペクション)を依頼した会社に解説してもらうとよいでしょう。
7施工品質
最後にチェックすべきポイントとしては、建物の施工品質です。完成してすぐの時点では、建物の不具合に起因する症状が表面化していないこともありますが、それでも施工不良が確認されることは少なくありません。何もかも買主が自らチェックすることはできないものの、以下については丁寧に家族で確認した方がよいでしょう。
- ・基礎のひび割れ・じゃんか
- ・外壁のひび割れ・継ぎ目の状況
- ・室内の壁・床のひび割れ
- ・室内の床の仕上がり
- ・扉・サッシの動作確認(鍵の施錠も)
施工品質をチェックするときに、傷や汚れについても確認して売主へ補修・清掃を求めることも良いのですが、単に粗探しをするだけではなく、構造的な問題が心配されるような症状の有無を確認したいものです。大事な買い物ですから、専門家に住宅診断(ホームインスペクション)を依頼して床下や屋根裏も含めて診てもらうのも方法です。

荒井 康矩(アライ ヤスノリ)
2003年より住宅検査・診断(ホームインスペクション)、内覧会同行、住宅購入相談サービスを大阪で開始し、その後に全国展開。(株)アネストブレーントラストの代表者。
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